米2021年GDP成長率、第4四半期は前期比6.9%、通年は5.7%で1984年以来の高成長

(米国)

ニューヨーク発

2022年01月28日

米国商務省が1月27日に発表した2021年第4四半期(10~12月)の実質GDP成長率(速報値)は前期比年率6.9%だった(添付資料「図 実質GDP成長率の推移」、「表 四半期別実質GDPの成長率と寄与度」参照)。市場コンセンサス予想(ダウ・ジョーンズ調べ)の5.5%を上回った。

需要項目別にみると、在庫投資の寄与度がプラス4.9ポイントと項目別で最も高く、押し上げに寄与した。ニューヨーク連銀の統計でもサプライチェーンに対する圧力の緩和を示すものもあり(2022年1月18日記事参照)、在庫逼迫が徐々に緩和している可能性がある。また、GDPの約3分の2を占める個人消費の前期比伸び率(年率)は3.3%増で寄与度はプラス2.3ポイント、特にサービス消費が4.7%増(寄与度プラス2.1ポイント)で堅調だった。一方で、政府支出は2.9%減(寄与度マイナス0.5ポイント)と低調で全体を押し下げた。

2021年通年の実質GDP成長率は前年比5.7%となり、1984年の7.2%増以来37年ぶりの高成長を記録した。寄与度でみると、特に個人消費は通年でプラス5.3ポイントだった。前年の大きな落ち込み(マイナス2.6ポイント)からの反動もあり、その寄与率は9割以上となった(添付資料表参照)。

一方で、個人消費をはじめ、今後の先行きは不透明だ。12月までのデータには新型コロナウイルスのオミクロン株の感染拡大の影響がほとんど含まれていないと考えられることに加えて、長引くインフレの影響やこれに伴う連邦準備制度理事会(FRB)の金融引き締め姿勢(2022年1月27日記事参照)による金利上昇圧力などは、消費活動や企業活動の重しとなる。また、第4四半期のデータでは政府支出の落ち込みが顕著となったが、議会で審議中のビルド・バック・ベター法案は行き詰まりをみせており(2021年12月23日記事参照)、大規模な財政出動は足元では見込めない。IMFが1月25日に公表した世界経済見通しでは、同法案成立の遅れや金融緩和解除の前倒しなどを勘案し、2022年の経済成長率を4.0%と前回から1.2ポイント下方修正した(2022年1月26日記事参照)。新型コロナウイルス感染者数の増加やサプライチェーンの混乱などは一部緩和の兆しも見られるが、高インフレや金利上昇の影響は引き続き経済の重しとなっており、これらが2022年第1四半期(1~3月)のGDPにどのように影響してくるか注目される。

(宮野慶太)

(米国)

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