米FRB、3月の利上げ開始を強く示唆、バランスシート縮小も早期に開始へ

(米国)

ニューヨーク発

2022年01月27日

米国連邦準備制度理事会(FRB)は1月25、26日に連邦公開市場委員会(FOMC)を開催し、フェデラル・ファンド(FF)金利の誘導目標0.00~0.25%の現状維持と毎月300億ドルずつ(米国債200億ドル、MBS100億ドル)の減額(テーパリング)の維持を決定した(添付資料図1参照、注)。今回の決定も前回と同様に、参加者9人のメンバーの全会一致だった。

FOMCは声明文で、「パンデミックによる影響を最も受けた産業はこの数カ月改善していたが、直近の感染急増の影響を受けている」として、足元のオミクロン株拡大によって、飲食や娯楽などの産業が再び打撃を受けていることを指摘した。また、「物価上昇率は2%をはるかに上回っており、労働市場も堅調なことから、当理事会はFF金利の誘導目標レンジを引き上げることが間もなく適切になると予想している」として、前回声明文で「労働市場が雇用最大化と判断される水準に達するまでは、この(FF金利の)目標レンジを維持することが適切」としていた表現を改め、金利の引き上げ局面が近いことを示唆した。

ジェローム・パウエルFRB議長は会議後の記者会見において、利上げについて「何も決まっていない」としつつ、「われわれは、経済が2015年に利上げを開始した時とは全く異なる場所にいることを知っている」「労働市場ははるかに強く、インフレ率は2%の目標をはるかに超えて推移しており、当時よりもはるかに高い」「こうした違いは重要な意味を持つ」「委員会は3月の会合でFF金利を引き上げる考えであると伝えたい」と述べ、さらに今後の会合で毎回利上げする可能性はあるかと問われても、パウエル議長は否定しなかった。また、今回会合では「バランスシート縮小についての原則」と題したペーパーも発表し、そこではFRBのバランスシートの規模を「今後大幅に縮小する」と明言した。実施時期は「利上げ開始後」の開始とし、保有証券の償還分の再投資を減額していくとして保有証券自体の売却は除外した。縮小の具体的な時期やペースについて、パウエル議長は「今後の会合で議論して、適切な時期にそれを公開していく」と配慮する一方、前回は利上げ開始から資産縮小の開始まで約2年要しているが、「おそらく今回はもっと早く(資産縮小を)開始することになる」と述べ、利上げと同様に、資産縮小も急ぐ考えを示した。

3月上旬にはテーパリングが終了予定で、長らく続けてきたFRBによる資産購入が終了する。今回の声明文で利上げがまもなく適切となるとしたことから、次回3月15~16日のFOMCにおいて利上げが決定される可能性がかなり高まった。また、膨れ上がったバランスシート(添付資料図2参照)の縮小を早期に開始することも示唆されたことから、年内の利上げ回数や利上げ幅に加え、バランスシートの縮小計画なども次回のFOMCでの注目すべき論点となりそうだ。

(注)テーパリングの終了予定は2022年3月上旬、前回2021年12月会合において2022年6月から前倒しとなっている(2021年12月17日記事参照)。

(宮野慶太)

(米国)

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