VW、新規投資計画でさらなる電動化とデジタル化を推進

(ドイツ)

ミュンヘン発

2021年12月16日

ドイツ自動車大手フォルクスワーゲン(VW)グループは12月9日、2022~2026年の5年間の投資計画「プランニング ラウンド70」を発表した(同社プレスリリース外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます)。今回の投資計画では、電動化やデジタル化といった未来技術への投資をさらに拡大し、総投資額1,590億ユーロのうち過去最大の56%となる890億ユーロを割り当てた。

未来技術のうち、電動化に対しては、2020年発表の2021~2025年の5カ年投資計画「プランニング ラウンド69」(2020年11月24日記事参照)から約5割増の520億ユーロとした。同社は電動化への投資増額が必要な理由として、(1)欧州グリーン・ディール政策を受けたバッテリー式電気自動車(BEV)の普及、(2)自社蓄電池工場の建設、(3)蓄電池サプライチェーンの垂直統合を挙げた。VWは2030年までに、欧州内で6つの蓄電池工場を操業開始するとしている(2021年6月16日記事参照)。また、蓄電池正極材でのユミコア(本社:ベルギー)との協力、原材料となるリチウムの調達でバルカン・エナジー・リソーシズ(本社:オーストラリア)と長期契約を締結するなど(2021年12月15日記事参照)、蓄電池分野の垂直統合も進めている。他方、未来技術への投資に含まれるハイブリッド技術については、前年の5カ年計画から約3割減の80億ユーロとした。BEVに注力することで、BEV移行完了までの過渡期の技術であるハイブリッド技術への投資額を削減できるという。

未来技術のもう1つの柱はデジタル化だ。VWは、2030年に世界のモビリティ市場の売り上げの約3分の1はソフトウェアに関連するサービスになる、と予測している。同社は今回の「プランニング ラウンド70」で、自動運転を含むデジタル化に、前年の5カ年計画から約1割増の300億ユーロを計上した。

工場別計画では、VWの本社があるドイツ北部のニーダーザクセン州ボルフスブルク工場のBEVシフトが明記された。具体的には、現在、東部のザクセン州ツビッカウ工場などで生産されるBEV「ID.3」をボルフスブルク工場でも生産する。また、レベル4(注)の自動運転が可能な次世代モデルBEV「トリニティ(Trinity)外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます」を2026年から生産する。加えて、2030年までに新しいBEV工場を増設するとともに、研究開発センターも併設する。現在、ボルフスブルク工場は従業員5万1,712人で、「ゴルフ」「トゥーラン」「ティグアン」などの完成車や自動車部品を生産している。

VWは販売目標として、2026年に販売台数に占めるBEVの比率を25%にまで高めるとした。同社によると、現状の割合は5~6%という。また、VWグループの2021年の販売台数が900万台程度になる見込みとした。なお、2020年の販売台数は前年比15.2%減の930万5,400台だった(2021年2月2日記事参照)。

(注)自動車技術者協会(SAE)が定義する自動運転のレベル。レベル4は、限定された領域内で加速・操舵(そうだ)・制動を全てシステムが行い、ドライバーが全く関与しない状態での走行が可能。

(クラウディア・フェンデル、高塚一)

(ドイツ)

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