VW、向こう5年間の次世代技術への投資拡大

(ドイツ)

ミュンヘン発

2020年11月24日

ドイツの自動車大手フォルクスワーゲン(VW)グループは11月13日、向こう5年間のデジタル化、電動化など未来技術への投資を約730億ユーロに拡大することを同日開催の監査役会後に発表外部サイトへ、新しいウィンドウで開きますした。

向こう5年間の設備投資と研究開発費の総額1,500億ユーロのうち、(1)電動化、(2)既存モデルのハイブリッド化、(3)デジタル化への投資を全体額の約5割を占める730億ユーロに増額する。前回の5カ年計画では総額の4割だった。内訳は、電動化が350億ユーロ、既存モデルのハイブリット化が110億ユーロ、デジタル化が270億ユーロ。

特に、デジタル化への投資は前回の5カ年計画の金額から倍増させた。これには、2020年に活動を開始した社内組織「Car.Software」への投資が含まれる。この組織はVWグループ車種が統一的に使えるソフトウエアシステムの開発を進める。VWは自社開発のソフトウエアの比率を1割から6割に高める目標を掲げている。また、人工知能(AI)や自動運転、企業内プロセスのデジタル化にも投資する。

電動化について、VWは2030年までの同社の電気自動車(EV)販売台数を約2,600万台と予測している。うち約1,900万台がモジュラープラットフォームであるMEB(注)を基にしたものとなる見込み。一方、ハイブリッド車は約700万台と見込む。この販売台数を達成すべく、VWは2030年までに70モデルのEVを市場投入する。うち、約20モデルは既に投入済み。ハイブリッド車は同年までに60モデルを投入、うち半数は既に生産されている。

また、ドイツ北部のザルツギッター工場に約10億ユーロを投資する。同工場ではスウェーデンのノースボルトと設立した合弁会社が2024年から蓄電池のセル生産を開始予定で、そのための投資となる(2020年8月24日記事参照)。

一方で、ブランドを超えて同種の生産を集約し、グループ全体としての相乗効果、効率性を高める。例えば、ドイツ北部のエムデン工場では、EVである「ID.4」の生産に加えて、2023年から新型EV「エアロ(Aero)」を生産する。現在、エムデン工場で生産しているパサートは、2023年にシュコダブランドを生産しているスロバキア・ブラティスラバ工場に移管する。

今回の計画には、連結対象とならないこと、かつ、合弁会社内で投資資金が捻出されることから、中国におけるVWの合弁会社の投資額は含まれていない。

(注)Modularer E-Antriebs-Baukastenの略。VWが開発した次世代EV向けモジュラープラットフォーム(共通設計・部品共通化のための基盤)。

(クラウディア・フェンデル、高塚一)

(ドイツ)

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