中間選挙前に非公式為替レートが過去最安値、先行き不透明感増す

(アルゼンチン)

ブエノスアイレス発

2021年11月12日

アルゼンチンの為替相場が再び大きく揺れ動いている。11月11日現在の公定為替レート(インターバンクレート)1ドル=100.14ペソに対し、非公式の為替レートであるブルーレートは1ドル=207ペソと過去最安値になった。9月に実施された議会選挙(中間選挙)の予備選挙(PASO)前にも、公定レートとブルーレートの乖離幅は急拡大したが(2021年8月24日記事参照)、現在の乖離幅は100%を超えている。

乖離幅の拡大は、11月14日に行われる中間選挙の本選挙で与党の大敗が予測され、選挙後の経済政策、特に為替政策への不安が高まっているためだ。現地エコノミストらによると、有権者の支持を回復するために政府が打ち出している数多くの支援や補助金による財政支出の拡大に加えて、インフレの加速(2021年10月21日記事参照)、価格凍結による政府と民間企業との対立(2021年10月28日記事参照)、IMFとの債務再編交渉の停滞、世界的なエネルギー価格の高騰などが先行き不透明感を強めている。

政府は、9月16日に下院予算委員会に提出した2022年の国家予算案PDFファイル(外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます)において、2021年、2022年の主要なマクロ経済指標の見通しを示した(添付資料表参照)。予算案の議会での審議はこれからだが、2021年末の公定為替レートは1ドル=102.40ペソ、2022年末は131.10ペソ、2021年の消費者物価指数上昇率(インフレ率)は45.1%、2022年は33.0%とされ、高インフレが続く見通しだ。2021年の実質GDP成長率は8.0%と大幅なプラス成長だが、前年の落ち込み(マイナス9.9%)を取り戻すには至らない。2022年は4.0%の成長にとどまる見通しとなっている。基礎的財政収支は、2021年のGDP比4.0%の赤字から2022年には同3.3%と、財政赤字が縮小する見通しだ。

民間エコノミストの見通しは、政府よりも厳しい。中央銀行が2021年11月5日に発表した、国内外40人の民間エコノミストによる最新経済見通しの集計中央値(REM)によると、公定為替レートは2021年末に1ドル=105.05ペソ、2022年末は158.92ペソ、2021年のインフレ率は50.3%、2022年は48.9%、2021年の実質GDP成長率は8.3%、2022年は2.3%となっている。

写真 非公式為替市場で1ドル207ペソとなったアルゼンチン通貨(ジェトロ撮影)

非公式為替市場で1ドル207ペソとなったアルゼンチン通貨(ジェトロ撮影)

(山木シルビア)

(アルゼンチン)

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