モ中首相会談でモンゴルからの対中石炭輸出拡大に合意

(モンゴル、中国)

北京発

2021年10月26日

モンゴルのロブサンナムスライ・オヨーンエルデネ首相は10月12日、中国の李克強首相とオンライン会談を行った。モンゴル政府の発表によると、会談では、両国の「全面的戦略パートナーシップ」の拡大発展を確認したほか、両国間の貿易額拡大(100億ドルを目標)のため、双方の関係機関が積極的に取り組むことで合意した(注1)。貿易に関連して、両国首相は新型コロナウイルス感染状況の改善を前提に、モンゴルの主要貿易製品である石炭の輸出を増やし、両国企業が石炭調達の長期契約を締結することを支援すると表明した。

モンゴルが中国に輸出している石炭(HS 2701)は、主に製鉄用の原料炭だ(注2)。2019年以降のモンゴルから中国向けの石炭輸出量の推移(月次統計)をみると、2020年2~4月は新型コロナウイルス感染拡大の影響で、中国・モンゴル双方が国境を封鎖、石炭輸出量が大きく減少した。その後、4月後半から輸出再開以降回復に転じ、8~11月はそれぞれ前年同月を上回る勢いとなった。しかし、2020年11月にモンゴルで国内感染が発生、2021年4月以降もモンゴルでの国内感染が拡大したため(2021年4月28日記事参照)、中国が国境税関での検疫を強化、輸出量は大幅に減少した(添付資料図参照)。なお、2021年4月以降の石炭輸出の伸び悩みには、モンゴル国内の感染状況に加えて、同月以降、中国がカーボンニュートラルの達成に向けて粗鋼の減産(2021年4月20日記事参照)に動いている影響も重なったとみられる。

毎月の石炭輸出額を輸出量で割った平均単価は、2020年12月まで70~80ドル/トン前後で推移していたものの、世界的な石炭価格の上昇により2021年1月以降上昇、9月には200ドル/トンを超えた。なお、中国では石炭価格の上昇などもあり、9月中旬以降各地で電力使用制限が実施されている。

今回の会談で両国が石炭貿易拡大の方針に合意した背景には、石炭輸出を拡大したいモンゴルと、石炭の調達先を多元化し、調達を拡大したい中国の思惑が一致したことがあるとみられる。実現に向けては、新型コロナウイルス感染状況の改善や、スポット契約で行われているとされる石炭調達の長期契約締結への切り替えといった課題を解決する必要があるといえる。

(注1)2020年のモンゴルの対中貿易額は73億8,270万ドル。うち、輸出は54億8,996万ドルで、モンゴルの輸出全体の72.5%を占めている。

(注2)モンゴルが中国向けに輸出している石炭(HSコード:2701)のうち、約95%以上は歴青炭(HS 2701.12)で、主に製鉄用コークスの原料として用いられている。残りはその他の石炭(HS 2701.19)が5%弱、無煙炭(HS 2701.11)が0.1~0.3%となっている。発電用には、その他の石炭と瀝青炭のうち粘結性が弱いもの(亜歴青炭)が用いられる。本文中では、これらをまとめて石炭と表記した。

(藤井一範)

(モンゴル、中国)

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