EU理事会、ベラルーシへの制裁強化を決定

(EU、ベラルーシ)

ブリュッセル発

2021年11月17日

EU理事会(閣僚理事会)は11月15日、ベラルーシに対する制裁強化外部サイトへ、新しいウィンドウで開きますを決定した。今回の決定により、資産凍結とEUへの入域禁止といった制裁対象の適用基準が拡大され、EU域内への移民の違法な入域を促しているとみられるベラルーシ政府の活動に協力する、個人および団体を制裁対象に加えることができようになった。制裁強化の背景にあるのは、ベラルーシからポーランドなどのEU加盟国への不法移民の急激な増加だ(2021年9月13日記事参照)。ベラルーシ政府は関与を否定しているものの、EUは、こうした違法な入国の急増を、ベラルーシ当局による移民を利用した「ハイブリッド攻撃」と非難しており、10月21~22日に開催された欧州理事会(EU首脳会議)ではベラルーシへの制裁強化の方向性で一致していた。

今回の制裁は、ベラルーシに対する既存の制裁に追加されるものだ。EUは既に2020年10月から、2020年8月のベラルーシの大統領選挙の結果に対する市民の抗議活動への弾圧などを理由に、政府関係者などを対象に資産凍結とEUへの入域禁止を、またEU市民や企業による制裁対象者に対する資金提供の禁止などの措置を課している(2020年10月14日記事参照)。その後も、ベラルーシの情勢の改善がみられないことから、EUは制裁対象にアレクサンドル・ルカシェンコ大統領を含めるなど、制裁対象を段階的に拡大しており、これまで政府関係者を中心に166人と15団体が制裁対象の指定を受けている。また、5月23日のアイルランドのライアンエアー航空機のミンスク空港への強制着陸の発生以降は、EUは、ベラルーシの航空機によるEU空域の飛行やEU域内の空港へのアクセスを禁止するなど、制裁の内容を拡大している。

移民によるEU加盟国への違法な入国の問題は、2015年の難民危機以降、EUレベルでの難民・移民政策の見直し協議が難航するなど、EUでは非常にセンシティブな政治課題となっている。また、EUは2021年夏以降のエネルギー価格の急騰への対応に苦慮しており(2021年10月27日記事参照)、ルカシェンコ大統領がロシアからベラルーシを経由しEUに天然ガスを供給するパイプラインを停止させる可能性を示唆する発言をしたことから、天然ガス供給への影響も懸念される。EUは今回、制裁強化に踏み切ったものの、今後もこうした問題を含め、難しい対応を迫られそうだ。

(吉沼啓介)

(EU、ベラルーシ)

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