EU、ベラルーシとロシアへの新たな制裁で政治合意、ルカシェンコ大統領も対象に

(EU、ベラルーシ、ロシア)

ブリュッセル発

2020年10月14日

EU外相理事会は10月12日、EUとして新たな制裁の実施に関する政治合意を発表外部サイトへ、新しいウィンドウで開きますした。今回新たに対象となるのは、ベラルーシとロシアの当局関係者だ。ベラルーシでは、8月の大統領選挙の結果(2020年8月12日記事参照)をめぐり大規模な抗議活動が行われ、市民と当局との衝突により情勢が悪化している。また、ロシアでは8月に、野党指導者のアレクセイ・ナワリヌイ氏への化学神経剤を用いたとされる毒殺未遂事件が発生した。今回のEUによる新たな制裁の実施はこうした情勢に対応したものだ。

ベラルーシに対するEUの制裁では、既に10月2日にベラルーシ政府関係者40人に対して資産凍結やEUへの入域禁止などの措置を科しているが(2010年10月6日記事参照)、ベラルーシのアレクサンドル・ルカシェンコ大統領(注)に関しては、今後対象に含める可能性があると示唆したものの、大統領と反対派との対話による解決をEUが求めていたことから、制裁リストにはこれまで含めていなかった。しかし、EUのジョゼップ・ボレル外務・安全保障政策上級代表は外相理事会後の記者会見で、こうした対話の兆しが全く見られないことから、新たな制裁リストにルカシェンコ大統領も含まれると発言。さらに、全てのEU加盟国の支持を得ていることから、大統領を含む新たな対象者への制裁は速やかに実施される見通しだとした。

ロシアの野党指導者に対する毒殺未遂に関しても、ボレル上級代表は、事件に関与した人物に対して制裁を科すことで政治合意をしたと発表した。これはフランスとドイツの提案を受けたものだ。両国は10月7日に共同声明外部サイトへ、新しいウィンドウで開きますを発表し、化学兵器禁止機関(OPCW)によりナワリヌイ氏に使用された化学物質が旧ソ連で開発された「ノビチョク」類であることが確認されたことを受け、今回の事件に関してロシア当局の関与以外に説明がつかないとし、関係者への制裁を求めていた。この制裁の実施についてボレル上級代表は、全加盟国の完全な支持があったことから、実務的な手続きを残すのみとした。

(注)EUは、8月のベラルーシ大統領選が自由で公正なものでなかったという立場から、ルカシェンコ氏に民主的正統性がないとして、大統領とは認めていない。

(吉沼啓介)

(EU、ベラルーシ、ロシア)

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