EU理事会、エネルギー価格高騰に対するEUレベルの短期的対応には否定的

(EU)

ブリュッセル発

2021年10月27日

EU理事会(閣僚理事会)は10月26日、エネルギー担当相理事会の臨時会合をルクセンブルクで開催した。21、22日の欧州理事会(EU首脳会議、2021年10月25日記事参照)に引き続き、エネルギー価格の高騰とその対応策に関して、欧州委員会の提案(2021年10月14日記事参照)を中心に協議を行った。

EU理事会後の発表外部サイトへ、新しいウィンドウで開きますで、2021年下半期の議長国を務めるスロベニア(2021年7月1日記事参照)のイェルネイ・ブルトベツ・インフラ相は、脱炭素化への移行は問題の一部ではなく解決の一部だとした。また、欧州の気候中立とエネルギー分野の自立という目標の達成には、再生可能エネルギーや新技術への投資が必要だと強調した。

理事会後の記者会見で、欧州委のカドリ・シムソン委員(エネルギー担当)は、現在のエネルギー価格の高騰の原因は、世界的なガス需要の異例ともいえる高まりによるものであり、一部で批判を浴びている、脱炭素化への移行を前提にした現在のエネルギー市場の設計によるものではないとの幅広いコンセンサスが加盟国の間にはあると確認できたとした。ただし、一部の加盟国が求めているEUレベルでの短期的な措置に関しては、エネルギーミックスや税制、社会的状況などが加盟国間で大きく異なることから、こうした状況の全てに対応できる共通した解決策はないとの見解を示した。

また、同じく記者会見でブルトベツ・インフラ相は短期的な対応策に関して、ほとんどの加盟国が加盟国ごとに対応すべきとしており、EUレベルの措置に関する合意には至らなかったとした。ガス備蓄の共同調達や卸電力市場の改革、投機取引の規制などの中長期的な対策に関しても、EUのエネルギー規制機関間協力庁(ACER)や欧州証券市場監督局(ESMA)による調査結果を待った上で再度検討すると述べるにとどまった。

タクソノミーでの原子力や天然ガスの扱いにも言及

今回のEU理事会では、持続可能な経済活動のEU独自基準「タクソノミー」での原子力や天然ガスの扱いについても協議が行われた。ブルトベツ・インフラ相は、欧州委が発表を延期しているタクソノミーにおけるこうしたエネルギー源の扱いに関する委任規則(2021年4月22日記事参照)について、多くの加盟国が欧州委に対して策定を急ぐように求めていると明らかにした一方で、シムソン委員はその発表時期に関して明言を避けた。ただし、シムソン委員は、昨今のエネルギー価格の高騰は天然ガスへの依存を減らすべきであると同時に、再生可能エネルギーへの移行期の安定的なエネルギー源の重要性も明らかにしたとして、その点では原子力や天然ガスについて検討する必要があるとの見解を示した。

(吉沼啓介)

(EU)

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