カナダ総選挙直前の世論調査、自由党と保守党が拮抗、再び小数与党誕生か

(カナダ)

米州課

2021年09月16日

カナダの第44回連邦下院議会選挙は9月20日に投開票日を迎える(2021年8月18日記事参照)。CBCポール・トラッカーによる世論調査(9月15日時点)では、各政党の支持率は、自由党31.6%、保守党31.3%、新民主党19.8%、ケベック連合6.6%となっており、ジャスティン・トルドー首相率いる自由党とエリン・オトゥール党首率いる保守党が拮抗(きっこう)している。同調査による予想獲得議席数は、自由党151議席、保守党120議席、新民主党36議席、ケベック連合30議席となっており、単独過半数を目指す自由党の勝利が危ぶまれ、再び小数与党政権が誕生する可能性が高いとみられている。

今回の総選挙では、新型コロナウイルス対策が争点となる。トルドー政権は2020年3月以降、巨額の財政支援措置(2020年3月30日記事参照)を講じ、労働者支援などを行ってきたが、2020/2021年度(2020年4月~2021年3月)の財政赤字は3,140億カナダ・ドル(約27兆円、Cドル、1Cドル=約86円)と、前年度(217億7,000万Cドル)から大幅に拡大した。トルドー首相は今後の対策として、連邦政府職員と連邦政府管轄の交通機関利用者に対するワクチン接種義務化や(2021年8月19日記事参照)、10億Cドル規模のワクチン接種証明提出義務化の支援、ワクチンの無料ブースター接種の導入などを掲げている。

他方、野党第1党の保守党のオトゥール党首は、トルドー政権は新型コロナウイルス発生時に準備ができておらず、誤った決断を下し、人々の命を危険にさらすとともに、経済をまひさせたとし、今後はさらに多くの新型コロナウイルス変異株に備える必要があるとしている。オトゥール党首は、製薬会社との連携によって医薬品の生産量を増やし、国内のワクチン生産能力を高めることや、個人防護具(PPE)の国内生産強化のため資金を提供することや、国家緊急備蓄システムを全面的に見直して再構築することなどを公約している。

9月10~13日には事前投票が行われ、連邦選挙管理局によると、約580万人が投票した。これは2019年の総選挙時(約490万人)に比べ、18.4%増となっている。また、新型コロナウイルス感染拡大の影響から郵便投票の希望者が増加しており、同局によると、15日時点で約120万人に郵便投票に必要な投票用紙を発行したという。しかし、2019年選挙時の郵便投票者は5万人弱で、カナダでは郵便投票の実質的な歴史がないため、今回の集計に時間を要する可能性があるとみられる。

(大塚真子)

(カナダ)

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