低排出ガス車保有台数100万台、政府は蓄電池分野の職業訓練などに4,000万ユーロ支出

(ドイツ)

ミュンヘン発

2021年08月06日

ドイツ交通・デジタルインフラ省は8月2日、電気を動力源とする低排出ガス車(注)の国内保有台数が7月に100万台を超えたと発表外部サイトへ、新しいウィンドウで開きますした。連邦政府は2009年に発表した「国家電気自動車開発計画」で、2020年までに100万台以上の低排出ガス車を国内に普及させることを目標に掲げていた(2018年1月18日記事参照)。同省は低排出ガス車増加の最大の要因は「環境ボーナス(Umweltbonus)」(2020年7月15日記事参照)としており、アンドレアス・ショイアー交通・デジタルインフラ相は「改正気候保護法が規定する2030年までの温室効果ガス排出量の2019年比65%削減目標(2021年7月6日記事参照)達成のためには、低排出ガス車の国内保有台数は2030年までに1,400万台にすることが必要」と述べた。

低排出ガス車の需要増に合わせ、メルセデス・ベンツが蓄電池セル工場を世界8カ所に新設することを発表するなど(2021年8月3日記事参照)、ドイツの自動車メーカー各社は車両の電動化に向けて事業の変革を加速させている。

自動車産業の構造変化に伴う雇用減や配置転換への対策も

蓄電池関連の雇用の増加が期待される一方、内燃機関搭載車向けの部品関連では雇用減少が危惧されている(2021年5月31日記事6月9日記事参照)。これに対応するため、経済・エネルギー省は7月22日、蓄電池製造などで生まれる雇用機会のための職業訓練・再教育を行う総額4,000万ユーロのプログラムを開始すると発表外部サイトへ、新しいウィンドウで開きますした。

ドイツは「欧州共通利益に適合する重要プロジェクト(IPCEI)」の枠組みで、蓄電池分野で最大30億ユーロを助成し、その結果、国内に数千人の雇用が生まれるとしている(2021年2月4日記事参照)。ペーター・アルトマイヤー経済・エネルギー相は「蓄電池の生産・利用・リサイクルで、今後数年間に1万人を優に超える国内雇用が生まれる」とし、自動車の電動化で構造転換を迫られた地域や企業にとって大きなチャンスになるとしている。

本プログラムでは、(1)蓄電池研究機関、(2)教育機関、(3)蓄電池または蓄電池に関する重要な分野に関わる産業クラスターの3者がコンソーシアムを組み、応募することが条件になっている。応募期間は9月15日から11月3日までで、プロジェクトの実施期間は最大5年間。プロジェクトの運営では、コンソーシアムによって、国内に新たに生まれる蓄電池関連の付加価値創造に必要な職業訓練や職業資格、労働者の再教育を把握し、適切な措置を開発、実行、評価する。

(注)低排出ガス車には、バッテリー式電気自動車(BEV)、プラグインハイブリッド車(PHEV)に加え、燃料電池車(FCEV)を含む。

(クラウディア・フェンデル、高塚一)

(ドイツ)

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