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EVなど次世代自動車への対応進む-ドイツ自動車産業セミナーを浜松で開催(1)-

(ドイツ)

デュッセルドルフ、浜松発

2018年01月18日

浜松市を中心とする静岡県西部地域には、スズキをはじめとする輸送機器産業が集積している。そのため、ガソリンやディーゼルから電気自動車(EV)への移行を図る「EVシフト」についての関心が非常に高い。ジェトロは2017年12月11日、浜松でドイツ自動車産業と日本企業の動きを紹介する「ドイツ自動車産業セミナー」を開催した。ドイツでは11月、乗用車新規登録台数に占めるEVの比率が2%を超えた。関連の日本企業も活発な投資を行っている。ジェトロ・デユッセルドルフ事務所の木場亮次長が講演したセミナーの内容を2回に分けて報告する。

ドイツ自動車メーカーがEVに大規模な投資

ドイツ自動車工業会(VDA)のマティアス・ビスマン会長は2017年12月6日の年次記者会見で、ドイツ自動車メーカーは2020年までに400億ユーロをEVなど次世代自動車に投資し、今後2~3年の間に合計100車種、今後5~8年の間に150車種のEVを市場に投入するとの見通しを発表した。

フォルクスワーゲン(VW)は、2025年までに80車種のEVを市場に投入し、バッテリー関連で500億ユーロの調達を行う方針を既に明らかにしている。また、ダイムラーはEVに今後100億ユーロを投資し、2022年までに10車種のEVを市場に投入することを明らかにし、2018年半ばの完成を目指してドイツ東部のドレスデン近郊にバッテリー工場を建設している。ダイムラーが同社の戦略の中で、「モビリティーは将来、根本的に変化する。われわれの車はネット化され、EV化し、自動運転化される。同時にカーシェアが重要となる」と示しているとおり、EVの普及加速、車外との通信などのネットワーク化の促進や生産現場のモノのインターネット(IoT)化、カーシェアリングなどのサービス化が現在の自動車産業に起きている主な変化だ。

EV普及は安定的に増加の段階に

これらのうちEVの普及についてVDAは前述の年次記者会見において、2017年11月単月の新規乗用車登録台数に占めるEVの割合が初めて2%を超えたと発表した。2012年以降の燃料別自動車新規登録台数をみると、ほぼ一貫してガソリン車の比率が50%台、ディーゼル車が48%前後で推移してきたことが分かる(表1参照)。この比率に変化が生じたのは、2015年9月にVWの排ガスデータ不正問題が発覚してからだ。2016年はディーゼルの比率が45.9%に低下し、ガソリンが52.1%に増加した。2012年から2015年までの間、EVの比率は毎年0.1ポイントずつ増加している。

表1 ドイツの燃料別自動車新規登録台数の推移(単位:台、%)
燃料 2012年 2013年 2014年 2015年 2016年
台数 割合 台数 割合 台数 割合 台数 割合 台数 割合
ガソリン 1,555,241 50.5 1,502,784 50.9 1,533,726 50.5 1,611,389 50.3 1,746,308 52.1
ディーゼル 1,486,119 48.2 1,403,113 47.5 1,452,565 47.8 1,538,451 48.0 1,539,596 45.9
LPG 11,465 0.4 6,257 0.2 6,234 0.2 4,716 0.1 2,990 0.1
天然ガス 5,215 0.2 7,835 0.3 8,194 0.3 5,285 0.2 3,240 0.1
EV 2,956 0.1 6,051 0.2 8,522 0.3 12,363 0.4 11,410 0.3
ハイブリッド 21,438 0.7 26,348 0.9 27,435 0.9 33,630 1.0 47,996 1.4
合計 3,082,504 100.0 2,952,431 100.0 3,036,773 100.0 3,206,042 100.0 3,351,607 100.0

(出所)ドイツ連邦自動車局

より直近のデータをみると、2017年1~11月でディーゼル車の比率は39.3%と、4割を切った(表2参照)。同期間のEVの割合は0.7%だが、伸びは前年同期比2倍強となった。

表2 ドイツの燃料別自動車新規登録台数の推移(単位:台、%、△はマイナス値)
燃料 2015年1~11月 2016年1~11月 2017年1~11月
台数 割合 台数 割合 前年同期比 台数 割合 前年同期比
ガソリン 1,486,473 50.2 1,608,316 52.0 8.2 1,828,860 57.4 13.7
ディーゼル 1,421,557 48.0 1,427,918 46.1 0.4 1,251,989 39.3 △ 12.3
ハイブリッド 30,617 1.0 42,944 1.4 40.3 77,576 2.4 80.6
EV 10,443 0.4 10,076 0.3 △ 3.5 21,644 0.7 114.8
LPG 4,428 0.1 2,711 0.1 △ 38.8 4,005 0.1 47.7
天然ガス 5,015 0.2 3,046 0.1 △ 39.3 3,122 0.1 2.5
その他 154 0.0 63 0.0 △ 59.1 116 0.0 84.1
合計 2,958,687 100.0 3,095,074 100.0 4.6 3,187,312 100.0 3.0

(出所)ドイツ連邦自動車局

このトレンドは、ドイツ政府が過去に描いたものと合致している。ドイツ政府は2009年に発表した国家電気自動車開発計画で、2011年までを研究開発や法制度、基準を整備する「プレマーケットフェーズ」と位置付け、その後2016年までを、「市場黎明(れいめい)期」とした。そして、2017年以降をEVが安定的に増加する「マスマーケットフェーズ」になると予測した。同計画で、政府は2020年までに100万台以上のEVをドイツ国内に普及させることを目指す。

EV購入支援やインフラ整備で普及促す

EV普及の目標達成に向け、課題となるのはEV車両の価格の高さと充電インフラの不足だ。このうち、車両価格への対応として、ドイツ政府は2016年7月2日、世界の21の完成車ブランドと協力してEVへの買い替え支援策を開始した。「環境ボーナス(Umweltbonus)」と呼ばれるこの制度は、政府が公表したリストに掲載されている、価格が6万ユーロ以下のEVやハイブリッド車が対象で、動力が電気のみの純粋なEVを購入する際に4,000ユーロ、プラグインハイブリッド車を購入する場合には3,000ユーロを補助するものだ。補助金総額は12億ユーロに上り、同制度により約30万台の普及を目指す。資金は、半分をドイツ政府が、残りの半分を参加している自動車メーカーが負担している。制度開始以来、2017年11月末時点で合計4万2,251台が販売された。

最も売れたのはBMWで8,943台、以下、VWが5,975台、ルノーが5,557台と続く。日本メーカーでは三菱自動車が2,278台で6位、日産が1,305台で10位に入っている。米国新興勢力のテスラは全体的に価格帯が高いため1車種のみが対象で、10月末時点では1,157台で9位だったが、11月末時点では上位10位に入らなかった。韓国ブランドも同制度の恩恵を受けており、11月末時点で起亜は1,412台で8位、現代は1,359台で9位に入っている。VDAのビスマン会長は充電インフラ整備について、前述の12月6日の年次記者会見で、ドイツ国内の充電ステーションは現在1万700カ所にとどまるが、2018年にはドイツ政府の施策により3万カ所まで増え、急速充電ステーションは現在の530カ所から5倍に増えるとの見通しを発表した。BMW、ダイムラー、VW、アウディ、ポルシェ、フォードは超高速充電ステーション400カ所を欧州に造るための合弁会社を設立しており、民間主導の整備も進んでいる。

ドイツの各主要都市では、脱ディーゼル車の動きの中で、ディーゼル車が排出する窒素酸化物(NOx)による大気汚染を問題視する世論が高まり、ディーゼル車の走行を規制しようとする動きがシュツットガルトなどで出ている。こうした動きを受け、ドイツ政府はEV普及の政策を決定するための対策会議を相次いで実施している。2017年8月には「全国ディーゼルフォーラム」と呼ばれる会議が開催された。主に自動車メーカーの対応が話し合われ、ディーゼル車の排ガスを規制する対策を自動車メーカーのコスト負担で進めることが合意された。9月と11月に開催された「ディーゼルサミット」では、連邦政府と自動車メーカーが合計10億ユーロの資金を拠出し、自治体における電気バスの普及、EV充電インフラ整備などを助成することで合意した。こうした官民の取り組みにより、今後EVがどこまで普及するかが注目される。

(木場亮、志牟田剛)

(ドイツ)

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