スロベニアがEU議長国に就任、グリーン・デジタル関連法案にも注力

(EU、スロベニア)

ブリュッセル発

2021年07月01日

スロベニアは7月1日、EU理事会(閣僚理事会)の2021年下半期の議長国に就任した。EU理事会の議長国とは、半年ごとの輪番制で各加盟国が担当し、EU理事会における加盟国間の意見のとりまとめのほか、立法プロセスにおいては、法案提案権限を持つ欧州委員会やEU理事会と並ぶ立法機関である欧州議会との調整を、外交においては、域外国との交渉にも携わる。

スロベニアは就任に伴い、議長国ウェブサイト外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます上に、「共に、レジリエンス、欧州」をスローガンとする優先課題外部サイトへ、新しいウィンドウで開きますを発表した。スロベニアは議長国として、欧州の復興とレジリエンスの強化、法の支配と欧州的価値の擁護、近隣諸国の安全保障と安定への貢献などに努めるとした。

グリーン・デジタル関連の重要法案の成立に向け、議論の進展を目指す

スロベニアは、2021年上半期の議長国ポルトガル(2021年1月8日記事参照)に引き続き、復興レジリエンス・ファシリティ(RRF)を含めた復興基金の実施に注力するとし、RRFの予算執行の条件となる各加盟国の復興レジリエンス計画のEU理事会での早期承認(2021年6月18日記事2021年6月28日記事参照)を目指す意向だ。また、「新型コロナ危機」を教訓に、医療品などの確保や開発といった面でのEUの戦略的自律性や、EUの保健分野での同盟強化を推進する。

立法プロセスに関しても、これまで新型コロナウイルス対応にかなりの時間を取られていたことから、法案審議を加速させ、「新型コロナ危機」以前の通常の審議ペースに戻すとし、グリーン・デジタルの両分野での重要法案の成立に向けた働き掛けを強化するとした。まず、2050年までの気候中立とともに、2030年までの温室効果ガス55%削減(1990年比)の目標を法制化する欧州気候法の成立のめどが立ったことから(2021年4月22日記事参照)、グリーン関連法案では、2021年7月にも欧州委が提案予定の、2030年目標の達成に向けた一連の法改正案の議論を特に重視する。また、2020年12月に欧州委が提案したバッテリー規則改正案(2020年12月14日記事参照)に関しては、既存の加盟国の国内規制との関係や製造者責任の拡大など残された論点も多いとし、審議の進展を図るとした。

デジタル関連法案に関しては、欧州の価値に基づくデジタルプラットフォームの国際標準の確立を視野に、2021年11月のEU競争力担当相理事会に向けて、重要法案として位置付けられているデジタル市場法案(2020年12月22日記事参照)とデジタルサービス法案(2020年12月22日記事参照)に加えて、AI規制枠組み法案(2021年4月23日記事参照)についても、交渉を加速させるとした。

対外関係においては、引き続き、米国との関係強化やインド太平洋地域に関する戦略的協議を進める。また、将来的なEUの拡大を念頭に、秋にはEUと西バルカン諸国とのサミットを開催するなど、西バルカン諸国の復興支援を重視するとした。

(吉沼啓介)

(EU、スロベニア)

ビジネス短信 9eb16ff9f97c9f1a