ポルトガルがEU議長国に就任、復興政策の実施を最優先課題に

(EU、ポルトガル)

ブリュッセル発

2021年01月08日

ポルトガルは1月1日、EU理事会(閣僚理事会)の2021年上半期の議長国に就任した。議長国は半年ごとの輪番制で各加盟国が担当し、EU理事会における加盟国間の意見の取りまとめのほか、欧州委員会や欧州議会などのEU機関との調整や、域外国との交渉にも携わる。多層的な意思決定プロセスを有するEUが一体となって政策を決定・実施する上で、議長国が果たす役割は大きい。

ポルトガルは就任に伴い、議長国ウェブサイト外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます上に「公正」「グリーン」「デジタル」に基づく復興」をモットーにした最優先項目を明記した政策プログラムPDFファイル(外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます)を公表した。このプログラムによると、まず、新型コロナウイルス危機からの復興を最優先課題として12月に成立した2021~2027年度の中期予算計画(多年度財政枠組み:MFF)(2020年12月21日記事参照)や、新型コロナウイルス対策の特別予算である復興基金の実施を挙げている。特に、復興基金予算の9割近くを占める「復興レジリエンス・ファシリティー(RRF)」(2020年9月18日記事参照)で必要となる、各加盟国が提出して欧州委やEU理事会が審査する国別の復興計画の迅速な承認と実施を重視する。また、こうした予算の実施に当たっては、欧州委が掲げる「欧州グリーン・ディール」や「デジタル化」といった目標(2020年9月17日記事参照)を引き続き推進する。

欧州型の社会モデルを重視

こうした従来の政策に加えて、ポルトガルが強調するのが「公正さ」を重視した雇用や社会保障政策への取り組みだ。「グリーン」や「デジタル」に基づく復興では、誰もが包摂される欧州型の社会モデルの強化が求められるとし、適切な雇用条件、安全な労働環境、ワークライフバランスを考慮した労働時間などに関する新たな規制が必要だとする。具体的には、欧州委が2020年に発表した最低賃金指令案(2020年11月2日記事参照)の交渉などを主導する考えだ。

外交面では、米国と価値や利益を共有するパートナーとして新たな同盟関係を構築し、気候変動などの地球規模の課題に取り組むことや、国際社会でのEUの自律性を強化しつつ、WTO改革など多国間主義を重視する姿勢を示した。また、ポルトガルと歴史的に関係の強いブラジルを含むメルコスールとの自由貿易協定(FTA)が2019年6月に政治合意(2019年8月30日記事参照)したものの、その後の交渉が停滞している問題に関して、正式な署名に向けた環境作りを目指すことにも言及した。

(吉沼啓介)

(EU、ポルトガル)

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