欧州委、循環型経済に向けたバッテリー規制の改正案発表

(EU)

ブリュッセル発

2020年12月14日

欧州委員会は12月10日、バッテリーに関する規制の大規模改正となる規則案外部サイトへ、新しいウィンドウで開きますを発表した。「欧州グリーン・ディール」で2050年までの気候中立(温室効果ガスの排出実質ゼロ)を掲げる欧州委の「循環型経済行動計画」(2020年3月17日記事参照)における取り組みの第1弾だ。欧州委は「持続可能なスマートモビリティー戦略」(2020年12月11日記事参照)の中の電気自動車(EV)推進に向け、「欧州バッテリー同盟」(2018年10月17日記事参照)を立ち上げるなど、バッテリーの開発と生産を産業戦略上の重要政策として、官民一体で取り組んでいる。

ライフサイクル全体での規制強化へ

今回の改正案はあらゆる種類のバッテリーを対象とし、その製品設計から生産プロセス、再利用、リサイクルに至るライフサイクル全体を規定している。

製品設計では、EVバッテリーや産業用充電池を対象に、以下の点などを義務化する(規則案第7条)。

  • 製造者や製造工場の情報、バッテリーとそのライフサイクルの各段階での二酸化炭素(CO2)総排出量、独立した第三者検証機関の証明書などを含む、カーボン・フットプリントの申告(2024年7月1日から)。
  • ライフサイクル全体でのCO2排出量の大小の識別を容易にするための性能分類(performance class)の表示(2026年1月1日から)。
  • ライフサイクル全体でのカーボン・フットプリントの上限値の導入(2027年7月1日から)。

コバルトや鉛、リチウム、ニッケルを含むEVバッテリー、産業用バッテリー、自動車蓄電池に関しては、次の点などを義務化する(同第8条)。

  • これらの原材料のうち再利用された原材料の使用量の開示(2027年1月1日から)。
  • 再利用された同原材料のそれぞれの使用割合の最低値の導入(2030年1月1日から)

いずれの点も詳細は欧州委が今後、委任立法により決定するとしている。

さらに、循環型経済の推進策として、リサイクルの実施を前提に、種類別のバッテリーの回収義務などの製造者責任も追加する。モバイルバッテリーに関しては2023年末までに45%、2030年末までに70%の回収を求めることになる。また、EVバッテリー、産業用バッテリー、自動車蓄電池に関しては既存の回収義務の強化策として、最終消費者が新たなバッテリーを購入しない場合でも無償で回収することなどを求める。

この法案は今後、EU理事会(閣僚理事会)と欧州議会で審議されることになる。

(吉沼啓介)

(EU)

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