ドイツとフランス主導、欧州の次世代クラウドインフラとサービス構築へ前進

(ドイツ、フランス、EU)

デュッセルドルフ発

2021年07月19日

ドイツ経済・エネルギー省(BMWi)とフランス経済・財務・復興省は7月9日、「次世代のクラウドインフラとサービスに関わる欧州共通利益に適合する重要プロジェクト(IPCEI-CIS)」におけるドイツでの「関心表明手続き外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます(Interessenbekundungsverfahren)」(注1)の開始を発表外部サイトへ、新しいウィンドウで開きますした。IPCEI-CISは、欧州の次世代のクラウドインフラとサービスを構築する枠組みとして2021年初めから構想され、合計で11のEU加盟国(注2)が参加、ドイツとフランスが共同で取りまとめている。ドイツでは、6月22日に欧州委員会に承認されたドイツ復興・レジリエンス計画(DARP、2021年6月28日記事参照)の中でも「次世代クラウド基盤とサービスの導入」のため7億5,000万ユーロ規模の予算を確保している(注3)。

IPCEI-CISの枠組みでプロジェクトが採択されるまでには、(1)ドイツ国内の「関心表明手続き」、(2)欧州レベルのマッチメーキングプロセスの2段階を経る必要がある。ドイツでの民間企業からのプロジェクト概要募集は8月30日まで行い、経済・エネルギー省が選定した後、欧州レベルのマッチメーキングプロセスへと進む。

欧州のための安全で信頼できるデータインフラストラクチャーを整備することを目的としたプロジェクトには、既にガイア-エックス(GAIA-X、2020年6月8日記事参照)がある。IPCEI-CISはこれに続く欧州のデジタル主権の基礎を築き、分散型システムによるリアルタイムで大量のデータの交換・処理を保証する新たな技術の発展を促すことを目指す。現在、エネルギー効率が高く自動化・ネットワーク化されたクラウドサービスやエッジクラウドの開発が必要とされている。

ドイツのペーター・アルトマイヤー経済・エネルギー相は「IPCEI-CISの枠組みにより、強力な次世代のクラウドインフラを欧州に構築する。これは、新たな革新的な産業がデータドリブンなビジネスモデルの決定をするために必要なものだ」と強く表明した。フランスのブリュノ・ル・メール経済・財務・復興相は「われわれの価値観や法律を尊重した競争力のある欧州の技術による問題解決のエコシステムを経済が享受できるように、欧州のパートナーとともに投資を行なう」と説明した。

2021年末までにIPCEI-CISを欧州委員会に事前通知し、2022年前半に各プロジェクトについて欧州委員会の承認を得る予定。

(注1)連邦予算規則に定められている、民間企業が公共事業を同等以上に実行できるかどうか、またどの程度実行できるかを表明する手続き。

(注2)ベルギー、フランス、ドイツ、ハンガリー、イタリア、ルクセンブルク、ラトビア、オランダ、ポーランド、スロベニア、スペイン。

(注3)EUでは、域内の競争条件をゆがめる恐れのある国家補助は原則として禁止しているが、域内の経済成長と雇用、産業の競争力強化に資するなどの条件を満たす場合は、IPCEIによる個別企業への助成を認める。これまでに、次世代電池サプライチェーンの構築(2019年12月10日記事2021年1月28日記事参照)、マイクロエレクトロニクス技術分野(2020年10月19日記事参照)でIPCEIによる助成が認められた。

(ベアナデット・マイヤー、作山直樹)

(ドイツ、フランス、EU)

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