デューデリジェンス法が成立、2023年1月に施行

(ドイツ)

ベルリン発

2021年06月30日

「サプライチェーンにおける企業のデューデリジェンスに関する法律」〔以下、「デューデリジェンス法」(注)〕が6月25日、ドイツ連邦参議院(上院)で承認され、成立した。

同法は、6月11日に連邦議会(下院)で可決(2021年6月17日記事参照)の後、業界団体から企業に対して過大な負担を強いることや実効性などについて批判の声が相次いでいたが(2021年6月17日記事参照)、連邦議会で可決された内容は連邦参議院で修正されなかった。

デューデリジェンス法は、2023年1月1日に施行される。同法により、ドイツ国内に拠点を置く一定規模以上の企業は「注意義務(デューデリジェンス)」として、人権や環境に関連するリスク管理体制の確立と責任者の明確化、および定期的なリスク分析の実施が求められるとともに、具体的なリスクが確認された場合には是正措置を講じる義務が課される。対象となる企業は、段階的に拡張される。当初は従業員3,000人以上の企業、2024年1月1日以降は従業員1,000人以上の企業が対象となる。ドイツ連邦統計局のデータによると、ドイツ国内の従業員1,000人以上の企業は2,891社に上るという。

連邦参議院本会議では、アレクサンダー・シュバイツァー・ラインラント・プファルツ州労働相は、同法によりデューデリジェンスが義務化されたことで、「既に高い水準で自社サプライチェーンのデューデリジェンスに取り組む企業を、競争圧力から解放できる。企業にとっては、同法により明確な定義や実行可能な要件を提示されることで、法的安定性がもたらされる」として歓迎した。

なお同法は、EUの人権デューデリジェンスに関する指令が成立した場合には(2021年6月10日付地域・分析レポート参照)、指令に適合させる改正がされる。

(注)同法案の通称は、ドイツでは「サプライチェーン法(Lieferkettengesetz)」と報道されることが多いが、正式名称は「サプライチェーンにおける企業のデューデリジェンスに関する法律」であることから「デューデリジェンス法」で統一した。

(中村容子)

(ドイツ)

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