一部の米国非移民就労ビザの審査処理ペース、引き続き遅延傾向

(米国)

ニューヨーク発

2021年06月15日

米国商務省主催で6月7~11日にオンラインで開催されたセレクトUSA投資サミット2021(2021年6月14日記事参照)で、米国ビザ関連では、米国務省による「Understanding Business Visas(ビジネスビザについて理解する)」と、移民法専門弁護士による「Navigating the U.S. Visa Landscape(米国のビザ方針にかかる案内)」の2種類のセッションが行われた。

国務省によるセッションで同省ビザ政策分析官のジェネバ・ケンドリック氏は、新型コロナウイルスの影響でビザの発行所が閉鎖されている間も、食料サプライチェーン維持の観点から、H-2A(季節農業労働者)とH-2B(熟練・非熟練労働者)ビザの審査手続きは優先されており、手続きはリモートで対応し、2021年12月31日までは面接を免除していると説明した。処理期間の迅速化により、2020年度(2019年10月~2020年9月)にはH-2AとH-2Bで合わせて29万6,000件以上のビザを発行したという。

ケンドリック氏は、H-2ビザのほか、移民ビザや学生ビザの手続きも優先されているため、特殊技能職ビザ(H1-B)を含むその他のビザの審査には現在も時間を要していると述べた。

H-1BやJビザの一部(交流訪問者のうちインターンや研修生など)、Lビザ(企業内転勤者)などの非移民の就労ビザについては、2020年6月24日以降、当時のトランプ大統領による大統領布告により、新規のビザ発給は実質凍結され、在米の日系企業にも大きな影響を与えていた(2020年7月6日記事参照)。同措置は2021年3月末に失効外部サイトへ、新しいウィンドウで開きますしたものの(2021年4月5日記事参照)、ケンドリック氏によると、一連の審査処理ペースは以前の状況には戻っていないという。

こうした背景もあり、今回の国務省によるセッション、移民法専門弁護士によるセッションとも、聴講者からの質問は一連の手続きにかかる日数に関するものが多かった。

フラゴメン法律事務所のアンドリュー・グリーンフィールド移民法専門弁護士は、ビザ審査処理は現在も新型コロナウイルスの影響で時間を要しているとした。同事務所が関わる案件でも、ナショナルビザセンター(NVC、注)で動きが数カ月間ないものもあり、新型コロナウイルス感染拡大前の状況には戻っていないと指摘した。

(注)国務省傘下の機関で、移民局が請願書を許可した後、NVCはビザ申請者に必要書類や申請料支払い要領を案内し、提出された書類の審査や大使館や領事館での面接日の設定などを行う。

(吉田奈津絵)

(米国)

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