米USTR、他国のデジタル貿易慣行などを引き続き警戒、2021年外国貿易障壁報告書

(米国)

ニューヨーク発

2021年04月02日

米国通商代表部(USTR)は3月31日、米国の貿易・投資・サービスに対する障壁を国別に示した2021年版「外国貿易障壁報告書(NTE)」を公表外部サイトへ、新しいウィンドウで開きますした。

2021年版のNTEは、65カ国・地域を対象に米国にとっての貿易障壁を報告している。これらの国・地域が米国の貿易額に占める割合は財貿易で99%、サービス貿易で87%となる。内訳をみると、EU(51ページ)、中国(36ページ)、インド(23ページ)、ロシア(19ページ)の順に記述が多く、並びは前年と変わりはない(2020年4月8日記事参照)。日本には前年と同じ18ページを割いた。

3月に就任したキャサリン・タイUSTR代表(2021年3月18日記事参照)は「2021年のNTEは、バイデン政権が米国の価値観を反映し、米国をより良く再建するための通商政策を形成する上での重要な課題や優先項目を特定するものだ」としている。前年まではUSTRが特に重視する分野についてファクトシートを発表していたが、今回はその発表はなく、代わりに、プレスリリース内で(1)農産品貿易の障壁、(2)デジタル貿易、(3)過剰生産能力、(4)貿易の技術的障壁の4分野を例示している。(1)と(2)は前年もファクトシートで扱われていた分野となるが、(2)に関してUSTRは3月26日、デジタル課税を導入するイタリア、インド、英国、オーストリア、スペイン、トルコへの対抗措置に関するパブリックコメントの募集を開始(2021年3月31日記事参照)するなど、近年、同分野における他国の政策を強く警戒している。

また、(3)過剰生産能力については、中国のみを名指しして、国家主導の政策により鉄鋼やアルミニウム、太陽電池などの産業分野で市場原理に基づかない過剰生産を生み出していると懸念を示した。さらに「中国製造2025」などの方針に沿って、先端製造業分野でも今後、過剰生産を生み出す可能性があると警戒感を表している。

(4)貿易の技術的障壁では、EUによる化学物質関連の不透明な規制や中国のサイバーセキュリティ・暗号関連の基準、インドとブラジルでの通信機器・技術向けの試験・認証ルールなどを問題視している。

プレスリリース内では、日本に言及している箇所はない。

(磯部真一)

(米国)

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