米中合意など交渉成果を強調、デジタル貿易ルールは日米を手本に、2020年外国貿易障壁報告書

(米国)

ニューヨーク発

2020年04月08日

米国通商代表部(USTR)は3月31日、米国の貿易・投資・サービスに対する障壁を国別に示した2020年版「外国貿易障壁報告書(NTE)」PDFファイル(外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます)を公表した。

2020年版のNTEは、63カ国・地域を対象に米国にとっての貿易障壁を報告している。内訳をみると、EU(46ページ)、中国(26ページ)、インド(22ページ)、ロシア(20ページ)の順に記述が多く、並びは前年と変わりはない(2019年4月5日記事参照)。日本には前年より2ページ多い18ページを割いた。

EUについては、WTOで係争中のエアバスへの補助金や加盟国ごとの医薬品・化学・農業政策などに言及した。中国については、2019年12月の米中経済・貿易協定を歴史的な成果としつつ、USTRが2020年3月に発表した「中国のWTO順守に関わる議会報告PDFファイル(外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます)」などで指摘した貿易政策・慣行に引き続き対処するとした。

USTRはNTEとともに公表したファクトシート外部サイトへ、新しいウィンドウで開きますで、障壁撤廃のための交渉成果や、各国・地域の農業市場のアクセス改善、デジタル分野の貿易障壁に焦点を当てている。成果としては、米国・カナダ・メキシコ協定(USMCA)や中国、日本との協定を通じた農産品を含む幅広い市場アクセス改善のほか、コロンビアのトラック登録手数料の撤廃や、台湾の医薬品などに関わる機密情報の保護強化、ベトナムの輸入車試験制度の厳格化撤回(ロット単位から車種単位に緩和)などを強調した。日本については、2020年1月に発効した日米貿易協定および日米デジタル貿易協定に含まれる農業・デジタル分野での成果に加え、日米民間航空運送協定の見直しで米航空会社に羽田空港の発着スロットが追加付与されたことに言及。

デジタル貿易分野では、中国についてデータの越境移転制限・現地化要求やクラウドサービス業の外資単独参入の禁止、インターネット検閲が引き続き問題と指摘した。またデジタルサービス税について、USTRは2019年12月に、フランスの同税の導入が不公正な貿易慣行に当たると報告したが(2019年12月3日記事参照)、同じく導入を開始しているオーストリア、チェコ、イタリア、スペイン、英国など欧州各国を牽制している。USTRは、最も包括的かつ先進的なデジタル貿易ルールとして、USMCAと日米デジタル貿易協定を今後のルール策定のひな型とすべきとの考えを示している(注)。

(注)日米デジタル貿易協定には、デジタル製品への関税不賦課やデータの現地化要求の禁止、ソースコードおよびアルゴリズムの移転要求の禁止などの規定が盛り込まれている。詳細は2019年12月16日記事参照。

(藪恭兵)

(米国)

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