米USTR、6カ国のデジタル課税に対する追加関税案を発表

(米国、イタリア、インド、インドネシア、英国、オーストリア、EU、スペイン、チェコ、トルコ、ブラジル)

ニューヨーク発

2021年03月31日

米国通商代表部(USTR)は3月26日、デジタル課税を導入するイタリアとインド、英国、オーストリア、スペイン、トルコに対する調査について、対抗措置に関わるパブリックコメントを募集すると発表外部サイトへ、新しいウィンドウで開きますした。同時に、国別の追加関税の対象リストも示しており、検討結果次第では、対象製品に最大25%の追加関税が賦課される可能性がある。デジタル課税を検討中のインドネシア、EU、チェコ、ブラジルについては、調査を終了する一方、同税が導入された場合には新規で調査を開始するとしている。

最大約9億ドルの追加関税リスト示す

各国が導入・検討するデジタル課税については、トランプ前政権が1974年通商法301条(以下、301条)に基づき、2020年6月にEUと9カ国に対する調査を開始し、2021年1月には導入済みの6カ国について、国際課税の原則に反して米国企業を差別しているとの結論に至っていた(2021年1月21日記事参照)。バイデン政権へ移行したが、USTRはこれまで具体的な対抗措置を示してこなかった。

USTRはパブコメに際して、6カ国からの特定製品の輸入に最大25%の追加関税を賦課する案を提示している。追加関税の対象範囲は、米国企業に対する各国のデジタル課税額を算出根拠としており、課税額(推定)は6カ国合計で年間最大8億8,000万ドルに相当する(注1)。追加関税が発動された場合、USTRが国別に作成した暫定リストに掲載されている米国実行関税分類(HTS)8桁に該当する品目が賦課対象となる。

USTRは対抗措置の検討のため、4月30日まで書面によるコメントを受け付け、その後、バーチャルの公聴会を実施する(注2)。重点項目としては、デジタル課税による米商業への負担や制約の程度(米企業による支払額や支払額の年間増加率、コンプライアンス費用など)や適切な追加関税の合計額、追加関税率の引き上げ幅、対象品目の維持・除外・追加を挙げている。対象品目の変更については、各国のデジタル課税の撤廃に向けて、実用的または効果的であるか、また、追加関税が米国に不相応な経済的損害をもたらさないかの観点から、コメントを受け付ける。コメントの重複を避けるため、国単位とは別に6カ国共通の受け付け窓口を設ける。

OECD合意までは、選択肢としての対抗措置は維持する構え

今回の発表に際して、USTRのキャサリン・タイ代表は「米国は、国際課税について、OECDでの国際的な合意に達するための取り組みを続ける。一方、合意が達成されるまでは、必要に応じた関税の賦課を含めて、301条手続きによる選択肢を維持する」とコメントしている。

デジタル課税の国際ルールについては、2021年半ばまでの合意がOECDの目標であり、ジャネット・イエレン財務長官が2月のG20財務相・中央銀行総裁会合で、トランプ前政権が要求していた企業が同税を回避できる「セーフ・ハーバー(適用除外)」の提案を取り下げたことで協議の進展が期待されている(「ワシントン・ポスト」紙電子版3月15日)。

(注1)各国のデジタル課税の税率、米国企業への年間課税額(USTRによる推計)、追加関税の対象品目については、それぞれ以下のとおり。

  • イタリア:3%、最大1億4,000万ドル、官報案PDFファイル(外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます)Annex参照
  • インド:2%、最大5,500万ドル、官報案PDFファイル(外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます)Annex参照
  • 英国:2%、最大3億2,500万ドル、官報案PDFファイル(外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます)Annex参照
  • オーストリア:5%、最大4,500万ドル、官報案PDFファイル(外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます)Annex参照
  • スペイン:3%、最大1億5,500万ドル、官報案PDFファイル(外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます)Annex参照
  • トルコ:7.5%、最大1億6,000万ドル、官報案PDFファイル(外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます)Annex参照

(注2)パブコメと公聴会に関するスケジュールの詳細は以下のとおり。

  • 2021年4月21日:公聴会における証言希望(証言の要旨)の提出
  • 4月30日:書面によるコメントの提出
  • 5月3日:バーチャルの公聴会(6カ国共通)実施
  • 5月10日:バーチャルの公聴会(6カ国共通)への反論コメントの提出
  • 5月4~11日:バーチャルの公聴会(国別)実施
  • 5月11~18日:バーチャルの公聴会(国別)への反論コメントの提出

(藪恭兵)

(米国、イタリア、インド、インドネシア、英国、オーストリア、EU、スペイン、チェコ、トルコ、ブラジル)

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