経済・エネルギー省、BMWの次世代電池開発に総額6,800万ユーロ助成

(ドイツ)

ミュンヘン発

2021年04月26日

ドイツ経済・エネルギー省(BMWi)は4月19日、自動車大手BMWの次世代電池に関する研究開発に対し、総額6,800万ユーロを助成することを発表外部サイトへ、新しいウィンドウで開きますした。BMWが本社を構えるバイエルン州政府も助成の一部を負担する。

欧州委員会とドイツを含む複数のEU加盟国は2019年から「欧州共通利益に適合する重要プロジェクト(IPCEI)」(2019年12月10日記事参照)の枠組みで、域内の次世代電池サプライチェーンの構築を目指している。今回のBMWへの助成は、既に発表していた次世代電池支援の第2弾(2021年1月28日記事2月4日記事参照)の具体的金額を明らかにしたものだ。

BMWの販売台数に占める電動車の割合は、2016年の2.6%から2020年には8.3%に増加している(2020年の販売台数は232万5,179台)。BMWは2025年までバッテリー電気自動車(BEV)の販売台数が毎年5割以上増加すると見込む。また、BMWは2030年の同社の全世界販売台数のうちBEVの占める割合が少なくとも5割になると予測しており、エネルギー密度が高く(蓄電量が大きい)、コストを抑えた次世代電池への取り組みが不可避となっている。

BMWは次世代電池に関する第1弾のIPCEIにも参加、蓄電池研究に対して6,000万ユーロの助成を受けた(2020年7月30日記事参照)。第2弾の助成を受けて、BMWは、(1)次世代の先を行くリチウムイオン電池の開発、(2)プロセス技術の開発・最適化、(3)先駆的な蓄電池モジュール・システムのためのプロトタイプ生産施設の建設を行うとしている。

加えて、BMWは今回の助成を受けて、蓄電池のリサイクルと蓄電池原料の再利用にも注力するほか、全固体電池(注)の研究も行う。同社は全固体電池技術が車載用蓄電池領域でのゲームチェンジャーになるとみる。フランク・ウェーバーBMW取締役(開発担当)は「全固体電池技術を積極的に研究しており、2030年までに大量生産が可能な車載用全固体電池の実現を目指す。2025年までには先駆となる初の全固体電池搭載車の提示を計画している」とコメントしている。

次世代電池に関する第2弾のIPCEIの助成を受けるドイツ企業11社のうち、今回のBMWを除き、これまでに4社に対する具体的助成額が発表されている(2021年3月31日記事参照)。経済・エネルギー省によると、今後数週間で他の企業への助成額も順次発表していく予定だという。

(注)リチウムイオン電池は電解質に液体(電解液)を使用するが、全固体電池は電解質に固体を使用する。リチウムバッテリーよりもエネルギー密度が高く、充電時間も短縮される。

(クラウディア・フェンデル、高塚一)

(ドイツ)

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