追加関税などにマイナスの影響受ける企業は2割、2020年度カナダ進出日系企業実態調査

(カナダ)

米州課

2020年12月23日

ジェトロが12月22日に発表した「2020年度海外進出日系企業実態調査(北米編)」(2020年12月22日記事参照)によると、追加関税など通商環境の変化について「全体としてマイナスの影響がある」と回答した在カナダ日系企業は前年の結果同様、2割となった(添付資料図1参照)。業種別でみると、自動車等部品(42.9%)、商社・卸売業(33.3%)などでマイナスの影響があると回答した比率が高かった。

マイナスの影響を受ける具体的な政策を聞いたところ、「米国の鉄鋼・アルミニウムを対象とした追加関税(通商拡大法232条)」(注)が33.3%を占め、「米国の通商法301条に基づく追加関税」が22.2%で続いた(添付資料図2参照)。具体的な影響として、中国からの輸入品への追加関税の支払いや中国関連の貿易が全般的に減少するリスクなどが挙がり、米中間の追加関税応酬の影響を受けている企業が多数見受けられた。

通商環境の変化への対応策としては、「情報収集体制の強化」が43.8%と上位に挙がり、「生産性向上・効率化によるコスト吸収努力」が38.4%で続いた。具体的な取り組みとして、業界団体への参加やグループ会社との情報共有、社内業務の自動化・デジタル化の推進などが挙がった。

原材料・部品の調達先については、カナダ(37.9%)、米国(21.8%)、メキシコ(1.1%)を合わせたカナダ・米国・メキシコ協定(CUSMA)域内の調達比率が60.8%となり、前年(56.1%)から4.7ポイント増加した。一方、日本からの調達比率は21.2%と前年(22.6%)からわずかに減少した。調達先の今後の方針については、全体的に現状維持の傾向が見られたが、ASEANからの調達拡大を検討する企業が多かった。

製品の販売先については、カナダ向けが65.5%(前年64.0%)、米国とメキシコを合わせたCUSMA向けが85.6%(同82.2%)となり、日本向けは11.9%と前年(14.3%)から減少する結果となった。今後の販売方針としては、カナダや米国での販売拡大を検討している企業の割合が高かった。

今後の事業拡大は過去最低水準

今回の調査では、今後のカナダでの事業展開の方向性についても聞いた。その結果、今後1~2年で事業の「拡大」を検討する企業は29.9%と前回(35.6%)から5.7ポイント減少し、過去最低水準となった(添付資料図3参照)。「拡大」の理由としては、「現地市場での売り上げ増加」が75.0%を占め、「高付加価値製品・サービスへの高い受容性」(38.6%)、「成長性、潜在力の高さ」(36.4%)が続いた。具体的に拡大する機能としては「販売機能」(56.8%)、「生産(高付加価値品)」(20.5%)が上位に挙がった。

(注)米国は通商拡大法232条に基づくアルミニウム製品への追加関税をカナダに対して2020年8月16日から再び課していたが、9月15日、再賦課した追加関税を9月1日にさかのぼって撤廃すると発表した(2020年9月16日記事参照)。

(大塚真子)

(カナダ)

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