新型コロナで業績は大幅悪化、2020年度カナダ進出日系企業実態調査

(カナダ)

米州課

2020年12月22日

ジェトロは12月22日、2020年9月に実施した「2020年度海外進出日系企業実態調査(北米編)」の結果を発表した。調査結果によると、在カナダ日系企業のうち2020年に黒字を見込む企業の割合は53.8%と前年(77.1%)から23.3ポイント減少し、2009年度調査以来11年ぶりに6割を切った(添付資料図1参照)。地域別では、旅行・娯楽業や鉱業・エネルギー業が集積するブリティッシュ・コロンビア州の黒字見込みが27.3%と低かった。景況感を示すDI(営業利益が前年比で「改善」した企業の割合から「悪化」した企業の割合を引いた数値)は、マイナス39.7と過去最低値を更新した。

営業利益悪化の企業は5割超

営業利益が前年比で悪化する企業は54.1%となり、前年(33.6%)から20.5ポイント上昇した。営業利益の前年比増減幅をみると「1~5割減」が32.2%を占め、「横ばい」が31.5%と続いた。業種別でみると、プラスチック製品と旅行・娯楽業で全企業が「悪化」と回答した。悪化の主因としては、製造業、非製造業ともに「現地市場の売り上げ減少」が上位となり、新型コロナウイルスによる活動制限が影響した。一方、食料品や情報通信業などでは前年比で悪化の割合が3割前後にとどまり、改善が2~4割に達するなど業種により明暗が分かれた。

懸念されたサプライチェーンへの影響は限定的

調達先や生産地、販売先などサプライチェーンの見直しについて聞いたところ、見直しを予定している企業はいずれも1割前後にとどまった。調達先を見直す理由として、「通商環境の変化」を挙げた企業が54.5%と過半を占め、変更対象の調達先としては中国が上位に挙がった。調達先を変更した企業からは、「カナダは米国の影響で保護貿易主義の傾向があり、輸入規制により他の調達先を探すしかなかった」との声が聞かれた。販売先の見直しについては、「新型コロナウイルス感染拡大」を理由に挙げた企業が55.6%を占め、変更後の販売先としてはカナダが上位となった。

経営上の課題については、販売・営業面の課題が上位に挙がり、「取引先からの発注量の減少」「新規顧客の開拓」がそれぞれ4割強を占めた(添付資料図2参照)。理由として、新型コロナウイルスの影響を挙げた企業が多かった。また、「従業員の質」(29.4%)や「従業員の賃金上昇」(25.2%)といった雇用・労務面での課題も浮き彫りとなった。このほか、在宅勤務によるコミュニケーション頻度の低下などを課題とする声も聞かれた。経営上の課題への対応策としては、「販売方法の見直し・強化」「社内コミュニケーションの活発化」が上位に挙がった(添付資料図3参照)。

(大塚真子)

(カナダ)

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