USMCA域内での生産・販売を推進、2020年度米国日系企業実態調査

(米国)

米州課

2020年12月28日

ジェトロが12月22日に発表した「2020年度海外進出日系企業実態調査(北米編)」(2020年12月22日記事参照)では、米国進出日系製造業のサプライチェーン(原材料・部品の調達先、米国市場向け製品の生産地、製品の販売先)の状況や今後の方針について聞いた。その結果、米国・メキシコ・カナダ協定(USMCA)域内での調達比率は5割強にとどまったものの、生産比率は7割、販売比率は9割となり、在米日系製造業は調達先の多角化を進めながら、USMCA域内での生産・販売を推進していることが示された。また、今後の方針をみると、米国での調達・生産・販売を拡大する方針の企業が多い一方で、中国からの調達や生産を縮小する方針の企業が4~5割を占めた。

日系製造業の原材料・部品の調達先をみると、米国内からの調達比率は51.0%で、メキシコ(2.0%)とカナダ(1.2%)を合わせたUSMCA域内の調達比率は54.2%だった(添付資料図1参照)。日本からの調達比率は30.9%と米国に次ぐ高さで、中国は6.4%、ASEANは3.7%だった。業種別でみると、USMCA域内の調達比率は自動車など(78.3%)、食料品(76.7%)、鉄・非鉄・金属(73.1%)で7割を超えた。日本からは精密・医療機器(69.5%)や一般機械(52.1%)で過半を占め、中国からは電気・電子機器(17.1%)や電気・電子機器部品(16.2%)で高かった。

日系製造業の米国市場向け製品の生産地については、米国内での生産比率は66.7%で、メキシコ(3.2%)とカナダ(0.8%)を合わせたUSMCA域内の生産比率は70.7%だった。日本は19.1%で、中国は3.3%、ASEANは3.1%だった。業種別でみると、USMCA域内の生産比率は輸送用機器・部品が突出しており、自動車などが95.9%、鉄道・運搬車両などの部品が88.6%、自動車などの部品は88.4%だった。日本の生産比率は調達と同様に精密・医療機器(54.8%)や一般機械(40.8%)で高かった。

日系製造業の販売先については、米国内が81.2%で、メキシコ(4.5%)とカナダ(3.6%)を合わせたUSMCA域内の販売比率は89.3%だった。日本は3.8%で、EUは2.3%だった。業種別でみると、USMCA域内の販売比率は自動車など(97.8%)や自動車などの部品(96.6%)をはじめ、多くの業種で9割を超えた。日本向けは鉄道・運搬車両など(12.5%)や食料品(10.1%)で1割を超えた。

日系製造業のサプライチェーンに関する今後の方針では、調達先について米国の地場企業(72社)や日系企業(41社)から調達拡大を検討する企業が多く、米国市場向けの生産地や販売先についても、米国で拡大を検討する企業が生産で91社、販売で97社と多かった。一方、米中対立などの通商環境の変化の影響(注)を受けて、中国からの調達を縮小する方針の企業の割合が50.0%(前年36.8%)、生産を縮小する方針の企業の割合が41.8%(前年26.0%)と前年から増えた(添付資料図2参照)。また、中国の代替先として、ASEANからの調達を拡大する方針の企業が42.9%(前年34.3%)、生産を拡大する企業が36.2%(前年20.5%)と前年から増加した。

USMCAについて「影響はない」が約6割に

2020年7月1日に発効したUSMCAの在米日系製造業の影響については、「影響はない」と回答した割合は前年(54.1%)から5.4ポイント増の59.5%で、「分からない」が前年(33.5%)から3.9ポイント減の29.6%だった。「マイナスの影響がある」は前年(4.3%)から0.3ポイント減の4.0%にとどまったものの、原産地規則が厳しくなった自動車・同部品などでは13.3%と他業種と比べて高かった。なお、日系製造業のUSMCA利用率は33.6%で、自動車・同部品などの利用率は42.5%だった。

(注)米国進出日系企業への通商環境の変化の影響については、2020年12月25日記事参照

(中溝丘)

(米国)

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