米大統領選挙を受け、政権交代後の一般特恵関税継続に関心

(フィリピン、米国)

マニラ発

2020年11月10日

フィリピンのロドリゴ・ドゥテルテ大統領は11月8日、米国大統領選挙の速報結果を受け、「フィリピンを代表し、米国のジョー・バイデン前副大統領の次期大統領選任に祝意を表する。フィリピン・米国の両国が長く培ってきた関係を新政権とも育んでいきたい」との声明を発表した。フィリピンは、米国政府との関係では訪問部隊地位協定(VFA)と一般特恵関税(GSP、注)の失効が2020年末に迫っており、政権交代を控えた米国政府との交渉が注目される(2020年2月13日記事2020年11月5日記事参照)。

フィリピン統計庁(PSA)によると、2019年のフィリピンにおける対米国輸出額は114億5,740万ドルで、最大の輸出先になっている。主要な対米輸出品目は、軍で使用する物資、集積回路および部品、ハードディスクドライブ、電源装置、自動車用ケーブルなどだ(添付資料表参照)。米国通商代表部(USTR)によると、2018年にフィリピンは米国のGSPで約17億ドルの関税減免を享受し、世界で6位の受益国だった。なお、ジェトロが2019年に実施した「2019年度アジア・オセアニア進出日系企業実態調査」によると、米国に輸出している在フィリピン日系企業17社のうち電機、自動車部品など5社がGSPを活用していた。

フィリピン政府は米国との自由貿易協定締結を希望しているが、米国政府が米国・メキシコ・カナダ協定(USMCA)などを優先したため交渉が進展せず、その間は米国のGSPで幅広く関税の減免を受けてきた(2019年12月5日記事参照)。ただし、2020年2月の現地紙報道では、米国民主党の上院議員6人がUSTRに対して「ドゥテルテ政権の人権侵害を制裁するために、フィリピン向けGSP適用を見直すよう」求めており、継続に不透明感が漂う。ジェトロがフィリピン貿易産業省に見通しを聞いたところ、「米国のGSPが継続される保証はないが、2018年に失効したときは、再開時に失効期間の関税も遡及(そきゅう)して還付された」と、更新への期待をにじませた。

このほか、フィリピンにとって重要な外貨収入源の在外フィリピン人の本国送金で、米国は2020年上半期に国・地域別で首位となっており、新政権の入国管理政策もフィリピン経済に大きな影響を与える(2020年8月25日記事参照)。

(注)開発途上国・地域を原産地とする鉱工業産品および農水産品の輸入について、一般の関税率よりも低い税率を適用することにより、開発途上国・地域の輸出所得の増大、工業化の促進と経済発展を支援するという、先進国による国際的途上国支援制度。トランプ政権は全てのGSP対象国について見直しを進めている。

(石原孝志)

(フィリピン、米国)

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