米国とのFTA交渉2020年中に開始も、米国はUSMCAを優先か

(フィリピン)

マニラ発

2019年12月05日

フィリピン貿易産業省のラモン・ロペス長官は、2020年中にも米国とフィリピンの自由貿易協定(FTA)交渉が開始される見込みだと発表した。12月2日付の地元各紙が報じた。

ロペス長官は、米国とのFTA交渉が2020年に交渉される見込みとしながらも、留意点として、北米自由貿易協定(NAFTA)に代わる米国・メキシコ・カナダ協定(USMCA)が米国政府にとって優先事項とし、メキシコやカナダとの間で署名し、現時点でまだ批准されていないUSMCAが批准されない限り、2020年11月に大統領選挙を控える米国政府にとって、フィリピンとのFTA交渉開始の優先度は低いとした。

ロペス長官はまた、米国とのFTAの早期締結が実現しなくとも、米国から現在認められている一般特恵関税(GSP)制度(注)を、フィリピン政府は最大限に活用するとした。GSP制度によってフィリピンの5,057の産品が、対米国輸出の際に関税が免除または削減されている。

在フィリピン米国商工会議所のエッブ・ヒンクリッフェ会頭は11月、いったんFTA交渉が開始されれば、10年以上の交渉を要したTPP(環太平洋パートナーシップ)や通常は数年かかる2国間のFTAとは異なり、米国とフィリピンの関係は良好で互いの考えを良く理解しているため、両国間のFTA交渉は極めて短時間で完了するだろうとした。

フィリピン統計庁(PSA)によると、2019年1月から9月までのフィリピンの対米国輸出額は前年同期比7.4%増の85億6,883万ペソ(約179億9,454万円、1ペソ=約2.1円)で国別2位、一方の対米国輸入額は前年同期比3.3%減の57億9,619万ペソで国別3位だ(2019年11月14日記事参照)。

(注)開発途上国・地域を原産地とする鉱工業産品および農水産品の輸入について、一般の関税率よりも低い税率を適用することにより、開発途上国・地域の輸出所得の増大、工業化の促進と経済発展を支援するという、先進国による国際的途上国支援制度。

(坂田和仁)

(フィリピン)

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