米国との訪問部隊地位協定(VFA)破棄、日系企業の事業戦略にも影落とす

(フィリピン、米国)

マニラ発

2020年02月13日

フィリピン外務省のテオドロ・ロクシン長官は2月11日、米国との訪問部隊地位協定(VFA)の破棄を在フィリピン米国大使館に通告したと発表した。2月12日付の「ラップラー」など地元各紙が報じた。この問題は政治的案件ながら、日系企業にも影響を与える。フィリピン貿易産業省(DTI)のラモン・ロペス長官は、本件が2020年中にも本格交渉の開始を見込んでいた米国とフィリピンの自由貿易協定(FTA)の交渉にも影響を与えるとしていた(「フィリピン国営通信社」1月29日)。

フィリピンの日系企業の製造業の多くは輸入関税が原則免除される経済特区に入居しているが、関税免除などの税制優遇制度を見直すCITIRA法案が国会で審議されている。日系部品メーカーA社はジェトロのヒアリングに対して、「CITIRA法案の成立を念頭に原産地証明書の手続きや対米FTAの利用可能性の確認など、準備を進めている」と回答し、これまでFTAを活用する必要のなかった企業も、対米FTAへの関心を示している。

なお、フィリピンの5,057の産品が対米輸出の際に関税が免除または削減されることを認める、米国による一般特恵関税(GSP)制度(注)は2020年末にその期限を迎える。この扱いについても、企業の関心は高い。

(注)開発途上国・地域を原産地とする鉱工業産品および農水産品の輸入について、一般の関税率よりも低い税率を適用することにより、開発途上国・地域の輸出所得の増大、工業化の促進と経済発展を支援するという、先進国による国際的途上国支援制度。トランプ政権は全てのGSP対象国について見直しを進めている。

(坂田和仁)

(フィリピン、米国)

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