2021年度歳出予算を発表、財政赤字は平時水準で過去最悪に

(英国)

ロンドン発

2020年11月27日

英国のリシ・スーナック財務相は11月25日、2021年度(2021年4月~2022年3月)の歳出予算外部サイトへ、新しいウィンドウで開きますを発表した。新型コロナウイルス感染拡大に伴い経済的に大きな打撃を受けている同国は、政府主導の経済対策の実施により公的債務が膨れ上がっており、計画には一部公務員に対する一時的な昇給の停止や、ODA拠出額の削減などが含まれた。

スーナック財務相は、当面の優先事項について、国民の生命と生計を守ることと強調した。政府は新型コロナウイルス感染拡大を受け、一時帰休従業員への給与給付制度(CJRS)や個人事業主への所得支援制度(SEISS)などの措置を講じており、新型コロナウイルス対策に2,800億ポンド(約38兆9,200億円、1ポンド=約139円)を費やした。英国予算責任局(OBR)の見通しによると、2020年度の財政赤字はGDP比19%の3,935億ポンドに上るとし、平時の水準としては過去最大となる。また、失業率は2021年第2四半期に7.5%にまで悪化するとしているものの、政府による経済対策がなければ、さらに深刻化していた可能性が高いとした。

また、公務員と民間企業の賃金格差にも言及、是正のために国民医療制度(NHS)職員などの医療サービス関連を除き、公務員の賃金昇給を見送る。さらに、2021年4月から全国最低賃金の引き上げも実施するとしている。

財源確保のため、政府はこれまで実施してきた国民総所得(GNI)比0.7%に上るODA拠出(2020年6月17日記事参照)も、法律を変更して一時的に0.5%に引き下げることも発表した。これを受け、外務・英連邦・開発省のリズ・サッグ海外領土・持続可能な開発担当閣外相が辞任するなど、政府内部からも反発が出ている。

一方で、政府は経済回復に向け、2021年度の1,000億ポンド規模に上るインフラ投資計画を発表した。その中で、11月18日に計画を発表した「グリーン産業革命」(2020年11月20日記事参照)についても、実現に向けインフラ投資を支援していくことに言及している。

イングランド銀行(中央銀行)が11月5日に発表したレポートでは、2020年通年のGDP成長率が前年比マイナス11.0%となる見通しを発表していたが(2020年11月17日記事参照)、OBRはマイナス11.3%になると予測する。これは1709年に起きた大寒波以来、約3世紀ぶりの大きな落ち込みとなる。

(尾崎翔太)

(英国)

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