第3四半期のGDP成長率、前期比15.5%、新型コロナ前の水準には届かず

(英国)

ロンドン発

2020年11月17日

英国国民統計局(ONS)の11月12日の発表によると、英国の2020年第3四半期(7~9月)の実質GDP成長率(第1次速報値)は前期比15.5%となり、現行方式で調査を開始した1955年以来最大の上げ幅を記録した。英国は第1四半期(1~3月)から2四半期連続のマイナス成長となり、リーマン・ショック以来11年ぶりにリセッション(景気後退)に入っていたが、今回脱却したかたちだ(2020年8月18日記事参照)。しかし、新型コロナウイルス感染拡大前に当たる前年同期との比較ではマイナス9.6%と、コロナ前の経済水準には完全には戻っていない(添付資料図参照)。

需要項目別にみると、内需を牽引する個人消費(家計最終消費支出)は前期比18.3%増と持ち直した(添付資料表参照)。レストランやホテル、交通機関への支出が牽引し、7月4日からイングランドでロックダウン緩和の第3段階に移行したことで(2020年6月24日記事参照)、飲食店やパブ、宿泊施設などの営業が再開したことが増加の要因となった。また、ホスピタリティー産業向けなどに政府が実施した「Eat Out to Help Out」や、VATの一部引き下げも増加を後押しした(2020年7月14日記事参照)。一方で、前年同期比では12.7%減となっており、新型コロナウイルスの影響前の水準に戻るほどの十分な伸びとはなっていない。

感染拡大が2020年夏にいったん落ち着きをみせ、世界的に自動車販売店の営業が再開されたことで、機械・輸送機器関連の輸出入が回復したことを背景に、輸出と輸入はそれぞれ前期比5.1%増、13.2%増となった。一方、前年同期比では15.0%減、20.3%減と依然厳しい状況が続く。

産業別にみると、英国経済を牽引するサービス業は前期比14.2%増となり、前期の19.2%減からプラスに転じている。流通・ホテル・レストランが前期比49.9%増と大きく持ち直したことに加え、運輸・倉庫・通信が10.6%増、ビジネスサービス・金融も4.4%増となった。ただし、前年同期比でみると、全産業でマイナスとなっている。

月別にみると、ロックダウン緩和が奏功し、7月は前月比6.3%増と大きく伸びたが、8月は2.2%増、9月は1.1%増と、伸びは鈍化している。8月末で終了した「Eat Out to Help Out」の反動から、9月は飲食店を中心に流通・ホテル・レストランで前月比で減となった。

イングランド銀行(中央銀行)は11月5日発表のレポートPDFファイル(外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます)の中で、英国の2020年通年のGDP成長率が前年比マイナス11.0%となる見通しを発表、8月時点のレポートではマイナス9.5%と予測しており、下方修正された。また、国内外での感染再拡大とそれに伴う規制再強化で、第4四半期(10~12月)には前期比マイナス2.0%と、再びマイナス成長に転じると予測している。

(杉田舞希、尾崎翔太)

(英国)

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