上半期の貧困率が40.9%に上昇、今後も悪化傾向に

(アルゼンチン)

ブエノスアイレス発

2020年10月05日

アルゼンチン国家統計センサス局(INDEC)は9月30日、2020年上半期の貧困率が40.9%(前期比5.4ポイント増)、うち極貧層は10.5%(2.5ポイント増)となったと発表した(添付資料図参照)。同期の貧困層人口は約1,468万人、うち極貧層人口は約300万人に拡大した。

INDECの定義によると、月の収入額が4万3,785ペソ(約6万423円、1ペソ=約1.38円)を下回る世帯を貧困とし、同1万7,625ペソを下回る世帯を極貧層とする。貧困率は、それぞれの層に属する世帯人員の割合で、国内31都市(人口約2,860万人)を対象に、世帯アンケート調査(EPH)を基に算出している。

地域別にみると、首都ブエノスアイレス市の貧困率は17.3%(うち極貧率は3.7%)にとどまり、他地域と大きな差が生じている。全国の人口の約40%を占めるブエノスアイレス市の近郊地域(GBA)の貧困率は47.5%(うち極貧率13.6%)を記録し、同地域人口のほぼ半数が基礎的な食料や生活サービス、日用品にアクセスできていないことになる。アルゼンチン全土では、北東部の貧困率は42.8%(うち極貧率11.4%)、北西部は40.7%(うち極貧率7.9%)、パンパ地域(中心部)のコンコルディア市では52.2%を記録した。

年齢層別で見ると、2019年下半期の発表(2020年4月8日記事参照)に引き続き、若年層の貧困率が上昇している。特に、14歳から29歳の貧困率は49.5%で前期に比べ7.1ポイント増加した。0歳から14歳の場合、前期の52.3%から56.3%と4.0ポイント上昇(添付資料表参照)。しかし、国連児童基金(ユニセフ)は、2020年末にはアルゼンチンの子供(18歳未満)の貧困率は62.9%まで膨れ上がると見込んでいる(2020年8月18日記事参照)。

10月1日付の現地紙「ラ・ナシオン」は、上半期の貧困率上昇は引き続く物価高騰と、2018年から2年以上続く景気低迷、新型コロナウイルス感染拡大による外出禁止措置がもたらした収入の減少や失業率の悪化(2020年9月29日記事参照)が影響したとしている。INDECは、外出禁止措置の影響を受け、今回の調査は各世帯に電話アンケート調査を行ったと説明したが、同紙によると、貧困世帯の多くは電話を所有していないと専門家らが指摘している。このため、実際の状況を把握しきれていない可能性があるとされる。また、INDECは、四半期ごとの貧困率は発表しないものの、私立カトリック大学が行っている独自の貧困率調査によると、第2四半期(3~6月)の貧困率は47.0%を記録した。

写真 ホームレスが目立つブエノスアイレス市中心部(ジェトロ撮影)

ホームレスが目立つブエノスアイレス市中心部(ジェトロ撮影)

(山木シルビア)

(アルゼンチン)

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