貧困率が35.5%に上昇、若年層の貧困率も4割超す高止まり

(アルゼンチン)

ブエノスアイレス発

2020年04月08日

アルゼンチン国家統計センサス局(INDEC)は4月1日、2019年下半期の貧困率が35.5%(前期比0.1ポイント増)、うち極貧率は8.0%(0.3ポイント増)となったことを発表した。2019年下半期の貧困層人口は約1,217万人、うち極貧層人口は約224万人に膨れ上がった。アルベルト・フェルナンデス政権で貧困問題の解決は優先課題の1つになっている。

INDECは、基礎的食料品への支出額が月額3万6,575ペソ(約6万1,450円、1ペソ=約1.68円)を下回る世帯を貧困層、1万4,874ペソを下回る世帯を極貧層と定義している。貧困率は、それぞれの層に属する世帯人員の割合で、国内31都市を対象にINDECが実施した世帯アンケート調査を基に算出されている。

今回特徴として浮かび上がるのは、まず首都ブエノスアイエス市とそれ以外の地域との格差だ。ブエノスアイレス市の貧困率は13.5%(うち極貧率は1.3%)の一方、ブエノスアイレス市近郊地域の貧困率は40.5%(うち極貧率は11.3%)で、隣接しながらも大きな差が生じている。アルゼンチン全体では、北東部(40.1%)や北西部(40.7%)は貧困率が40%を超えている。また、年齢層別で見ると、若年層の貧困率が高止まりを示している。15歳から29歳の貧困率は42.5%(うち極貧率は9.5%)と前期比で微増、0歳から14歳の貧困率も52.3%(うち極貧率は13.6%)と前期と同様に半数を超えている(添付資料参照)。

マウリシオ・マクリ前政権では、2016年下半期から公式の貧困指数を復活。同期は貧困率が30.3%だったが、実質GDP成長率がプラス成長を記録した2017年の下半期には25.7%まで改善した。しかしその後、国内経済が悪化すると、それに並行して貧困率も悪化。2018年下半期には32.0%、2019年下半期は35.5%となった。マクリ前政権期に掲げられた政権公約の1つだった貧困の撲滅は果たされなかった。

低所得者層から厚い支持を得て2019年12月に大統領に就任したフェルナンデス氏は、就任時の演説でも、経済の立て直しとともに、1,500万人近くの貧困層が存在する状況の克服を優先することにも言及し(2019年12月11日記事参照)、就任直後から、社会連帯・生産性回復法を通じて低所得層の収入改善などにも取り組んでいる。しかし、2020年の見通しについて、現地紙「インフォバエ」(4月1日付)は「新型コロナウイルス感染拡大の影響によって、経済へのインパクトは避けられず、政府による経済対策の効果も未知数で、貧困率や極貧率にも悪い影響を及ぼす」と伝えている。

(紀井寿雄)

(アルゼンチン)

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