大統領が年次教書演説で汚職撲滅と新型コロナ対策の成果を強調

(メキシコ)

メキシコ発

2020年09月04日

メキシコのアンドレス・マヌエル・ロペス・オブラドール大統領は9月1日、就任後2回目となる年次教書演説を行った。冒頭で、「メキシコが抱える諸問題の根源に政治腐敗があり、これを徹底的に根絶する」とし、これまでの汚職対策と経費節約によって5億6,000万ペソ(約26億3,200万円、1ペソ=約4.7円)の財源を捻出したと述べた。新型コロナウイルス感染拡大の影響については、「公衆衛生と経済の両方で危機に直面しているが、最も困難な局面は乗り越えた」とし、衛生面の成果として、969カ所の病院の改修、3万2,203床の病床増設、1万612台の人工呼吸器の調達を挙げ、2021年初めにはワクチン投与を無料で開始できる見込みと述べた。

経済面では、「大企業や銀行への支援は優先しない」として、零細事業者向け貸し付けの実施を説明するとともに、年金の前倒し支給などの福祉政策により、直近8カ月間に1,150憶ペソ(約5,405億円)を900万人の高齢者、若年者、障がい者などに給付したことを語った。また、「8月には9万3,000人の新規正規雇用が生まれ、雇用も回復傾向にある」と述べ、為替相場が1ドル=22ペソ台まで持ち直したこと、2020年上半期の対内直接投資が前年同期と比べて遜色ない規模だったこと(2020年8月25日記事参照)などを挙げ、早期に危機を脱するとの見方を示した。「諸外国は債務を急激に増大させて支援策を講じているが、メキシコは財政規律を保ち続ける。民衆のお金である国家予算を、救済が必要でない人のために使うことはしない」とコメントし、今後も大企業への経営支援策を講じる考えがないことを示唆した。

2019年の同演説で課題としていた治安に関しては(2019年9月4日記事参照)、政権発足前と比較して誘拐や窃盗などは約3割減少した一方、殺人は7.9%、恐喝は12.7%増加しており、取り組みを強化すると述べた。

大統領への支持率は下降傾向

「レフォルマ」紙が8月19~24日の期間に1,200人を対象に実施したアンケート(回答率は60%)によれば、大統領の支持率は56%で、2019年3月時点の78%から22ポイント下落した(添付資料図1参照)。政策への評価(添付資料図2参照)は、「教育」を除く全分野において「評価しない」が「評価する」を上回った。特に、「経済」と「組織犯罪対策」については「評価しない」がともに49%と半数近くを占めた。新型コロナウイルス対策に関しては、「政府は感染を制御できている」と考えているのは28%で、66%は「制御できていない」と答えた。また、「大統領が『コロナ禍』による経済危機を避けるために必要な措置を取ったか」という設問には39%が「取っている」とし、53%が「取っていない」と回答した。

(松本杏奈)

(メキシコ)

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