中銀が外貨取引規制をさらに強化、産業界が警鐘を鳴らす

(アルゼンチン)

ブエノスアイレス発

2020年09月17日

アルゼンチン中央銀行は9月15日、個人および企業に対する外貨取引規制をさらに強化する方針を発表した。中銀は同日付コミュニケ(通達)「A」7104号PDFファイル(外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます)7105号PDFファイル(外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます)7106号PDFファイル(外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます)およびプレス発表を通じて、今回の措置は、「非居住投資家による崩壊的な取引を阻止すると共に、国内の資本市場の発展を促しながら経済回復を目指すのが目的」と説明した。今回の措置の主な内容は次のとおり。

  • 個人による預金目的の外貨購入および外貨によるカード(クレジットおよびデビット)での購入に対し、所得税および個人資産税にあたる35%を課税する。現行の社会連帯・生産性回復法の30%課税(通称PAIS税)は継続(アルゼンチンの「為替管理制度」参照)。個人の両替では、現行の月額200ドルの上限(2019年10月29日記事参照)は継続するものの、税金を課することで、外貨購入意欲を妨げることを目的としているとする。また、デジタルサービスや国外のサービスなど、カードで支払う外貨建てサービスは、月額200ドルの上限に加算されていくことになる。このため、例えば、価格が1,000ドルの航空券を購入した場合、5カ月分の月額上限を使い果たし、この間において預金目的の外貨購入は不可となる。
  • 企業に対しては、2020年10月15日から2021年3月31日にかけて、国外との月当たり100万ドル以上の債務期限を有している場合、同債務額の約40%までの外貨取引を許可する一方、残り60%に関しては債務再編交渉を行うよう求めるとともに、同債務再編計画案を中銀に提出するよう求める。民間企業に対しても、国内経済が必要とする外貨および為替市場の安定性の維持に見合った外貨建て債務再編を行うよう促す。
  • 非居住者に対しては、「Contado con Liquidación(ペソで購入した有価証券を海外において外貨で売却する取引)」などの取引は不可とする。国外の投資ファンドなどによる為替相場の変動を利用して、その値鞘による利益を目的とした投機的な取引行為を妨げるのが目的とする。

9月16日付の現地紙「インフォバエ」によると、中銀の発表を受けて、国内の企業家らは「民間企業の債務不履行が強いられている」とし、「国内での投資、生産回復またインフレの抑制を妨げる措置」だと強く警鐘を鳴らしている。ミゲル・ペッシェ中銀総裁は、「債務再編交渉が成立すれば、資本規制の緩和する」可能性を伝えていた(2020年6月5日記事参照)ものの、外貨準備高の減少にかかる懸念が先般来高まっていたことで、外貨取引に関わる新たな措置が打ち出されることが予測されていた。中銀によると、9月11日時点の外貨準備高は424億5,200万ドルだが、9月15日付現地紙「iプロフェッショナル」では、真水の外貨準備高は「わずか62億5,200万ドルまで減少」と報じている。

写真 アルゼンチン中央銀行前(ジェトロ撮影)

アルゼンチン中央銀行前(ジェトロ撮影)

(山木シルビア)

(アルゼンチン)

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