中央銀行、外貨取引規制を再び強化

(アルゼンチン)

ブエノスアイレス発

2020年06月05日

アルゼンチン中央銀行は、5月28日付コミュニケ(通達)「A」7030号PDFファイル(外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます)に基づき、企業による外貨取引規制を強化した。今回の措置の目的を中銀は、政府が新型コロナウイルス対策として展開する企業向け支援策「雇用および生産のための緊急援助プログラム(ATP)」(2020年5月18日記事参照)や個人事業主向け融資を対外支払取引ではなく、国内経済活動の維持に活用させるためとしている。今回の通達の主な内容は次のとおり。

  • 対外支払取引を行うための外貨購入には、中央銀行の事前承認が必要となる。国外に外貨資産を持つ場合、それらを優先的に使う。
  • 財の輸入決済を行う場合、2020年1月1日から取引当日まで、未払い決済額を縮小している場合、中銀の事前承認を得る必要がある。有効期間は6月30日までとする。緊急患者や新型コロナ感染予防目的の医療関連製品の輸入取引は対象外。
  • 対外支払取引を目的に国内の為替市場で取引(外貨購入)を行う場合、「Contado con Liquidación」(ペソで購入した有価証券を海外において外貨で売却する取引)を前後90日間実行してはならない。
  • 企業が提出する申請書類は、SEPAIMPO(輸入代金の決済取引フォローシステム)の情報と照合する。情報に虚偽などが発覚した場合、外為法違反で刑事訴訟の可能性もある。

現地民間調査会社のエコラティナは措置導入の要因について、新型コロナの影響による経済活動の低迷、債務再編交渉が続く中での債務不履行(デフォルト)(2020年5月25日記事参照)、最大貿易相手国ブラジルの通貨レアルが2020年に入ってから約35%切り下がったことによる価格競争力の低下などを挙げ、「アルゼンチン経済は総じて厳しい状況」だと分析する。また、ここ数週間で、自国通貨ペソの公式為替レートと非公式レートの乖離が100%を超えた日もあり、ペソ切り下げ圧力がかかっているとされる。さらに、昨年来の資本規制強化や、足下での貿易黒字にもかかわらず、先行きへの不透明感から外貨準備高の減少が続いている。5月27日時点で外貨準備高は424億9,900万ドルで、5月は、前月比で10億ドル超の外貨準備高減となっている。

エコラティナによれば、5月中旬には「純外貨準備高は100億ドルを下回る」と警鐘を鳴らす。今回の中銀の措置により外準改善が目的とされるが、「輸入取引決済への制限はインフレを加速させる恐れがある」とも指摘する。

中銀のミゲル・ペッシェ総裁は5月29日、債務再編交渉が成立すれば、現行の資本規制を緩和する可能性をインタビューで発言しており、早ければ6月中には解決する見通しもあるとしている。

(山木シルビア)

(アルゼンチン)

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