フィリピン政府、首都圏と近隣州の隔離措置を緩和

(フィリピン)

マニラ発

2020年08月18日

フィリピン政府は8月17日、マニラ首都圏と近隣州に8月19日から31日までGCQ(比較的緩やかな隔離措置、注)を適用すると発表した。これらの地域では、感染者数の増加を踏まえ、8月4日から18日まで、MECQ(比較的厳格な隔離措置、注)を適用されており(2020年8月3日記事参照)、今回の発表で、隔離措置は一段階緩和となった。また、セブ市と周辺地域は8月31日までGCQに据え置かれる〔詳細はコミュニティ隔離措置ガイドライン(2020年8月18日改訂版)参照〕。

今回、マニラ首都圏では隔離措置が緩和されたとはいえ、長期のロックダウンが経済に与える影響は深刻だ。フィリピンの2020年第2四半期(4~6月)の実質GDP成長率がマイナス16.5%で、1981年の統計開始以降、最低を記録した(2020年8月13日記事参照)。また、経済閣僚で構成される予算調整委員会(DBCC)は8月6日、フィリピンの2020の経済見通しをマイナス5.5%に下方修正している(2020年8月14日記事参照)。そのような状況下、フィリピン商工会議所連合会のベネディクト・ユージュイコ会頭は8月9日、現地紙の取材に対して「経済活動の制限解除と景気刺激策を速やかに実行すべきだ」と、政府の対応を促した。

カルロス・ドミンゲス財務長官は8月9日、予算のうちの景気刺激策について、「景気刺激策については、2020年に1,400億ペソ(約3,080億円、1ペソ=約2.2円)を配分するほか、今期国会で審議する税制改革法案が成立すれば約400億ペソに相当する法人税の引き下げも可能となる」と説明した。

政府は、経済活動の停滞で歳入が減少する中でも、大型予算を組み、2020年に4兆3,400億ペソ、2021年は4兆5,060億ペソを計上。2020年、2021年と2年連続で約3兆ペソを借り入れて賄う計画で、4分の3は国内、4分の1は海外から調達する。財政赤字のGDP比については、2020年が9.6%、2021年が8.5%、2022年が7.2%と、経済回復に応じて抑制していくと発表している。

現在、国会では6月に失効した「国民が一体となって回復するための互助法」の継承法案が急ピッチで審議されている。同法が成立すると、「コロナ禍」対策の緊急措置に必要な権限が大統領に付与され、医療体制や設備の拡充、低所得者や失業者向け支援、零細中小企業向け貸し付け、遠隔教育などに予算が投入される。

さらに、経済の下支えのために、BCDA(基地転換開発公社)によると、国家インフラ整備事業の一部を新型コロナ感染対策や経済復興に直接寄与する事業に振り替えているという。

(注)ECQ>MECQ>GCQ>MGCQの順で厳格な隔離措置となる。

(石原孝志)

(フィリピン)

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