欧州産業連盟、3段階からなるコロナ対策をEUに提言

(EU)

ブリュッセル発

2020年04月17日

ビジネスヨーロッパ(欧州産業連盟)は4月14日、新型コロナウイルス問題への対処に関する欧州産業界の要望をまとめた書簡PDFファイル(外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます)を欧州理事会(EU首脳会議)のシャルル・ミシェル常任議長に提出した。同連盟は3月16日付で企業に必要な喫緊の救済・支援策をまとめた提言を発表している(2020年3月18日記事参照)が、今回の書簡は4月23日に予定される欧州理事会(テレビ会議)に向けて、EUに求められる対応を、緊急事態、出口、復興の3段階に整理している点が特徴だ。

まず、現状の緊急事態に関しては、EUレベルの取り組みとして、約37億ユーロに上る「コロナ対策投資イニシアチブ」(2020年3月13日記事参照)や、各加盟国のコロナ対応政策に対するEU国家補助ルールの柔軟な適用を認める「暫定的国家補助枠組み」、欧州中央銀行(ECB)の緊急量的緩和策(2020年3月19日記事参照)などの取り組みを評価。その上で、こうした措置の迅速・最大限の活用を加盟国政府に求めたほか、雇用の維持や操業の継続といった喫緊の課題に直面する企業への迅速なキャッシュフロー確保のための支援や、物品およびサービスのサプライチェーンの維持、デジタル技術の活用による企業および社会活動への制約緩和の支援、緊急時に必要不可欠な物品に対する貿易制限措置へのG20やWTO、OECDといった国際枠組みを通じた多国間連携などを求めた。

出口戦略:加盟国ごとに適切なタイミングで、各産業セクターへの配慮を要請

出口段階に関しては、まず現在のシャットダウンが1カ月延びることによる経済への悪影響は域内平均でGDP2%の減少に相当するという見方を示した。さらに、多くの企業が人員の解雇や事業所の閉鎖を余儀なくされている中、各種制限が長期化するほど、経済が立ち直る力がそがれていくと指摘し、各加盟国の適切なタイミングでの出口戦略の始動を促した。経済活動の再開は、産業セクターごとの事情に配慮すべきとし、とりわけ医療産業に関しては、マスクなど需要の急増する財やサービスの生産ラインならびにサプライチェーン全体の活性化、供給の不足する産品の物量確保のための機動的な産業転換など、EUレベルでの協調した産業政策が必要であると指摘した。

復興段階には、EUの長期的な繁栄の維持という視点からの政策提言が含まれている。前出の「コロナ対策投資イニシアチブ」がEUレベルでの協調的な復興計画の基礎となる必要があるとし、その増強を求めた。また加盟国は、野心的な次期EU多年度財政枠組み(MFF)の速やかな合意によりEUの連帯を示さなければならないと来る欧州理事会の成果に期待を表した。

そのほか、欧州商工会議所(ユーロチェンバース)は4月15日付で、欧州委員会のフィル・ホーガン委員(通商担当)ら4委員に対し、「コロナ危機にまつわる国際経済および貿易上の諸問題への対応策に関するポジションペーパー」を提出。各国の制限的措置のサプライチェーンへの影響などに対する危機感を表明した。

(安田啓)

(EU)

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