欧州産業界、新型コロナウイルス問題に危機感、中小企業救済策を提言

(EU)

ブリュッセル発

2020年03月18日

ビジネスヨーロッパ(欧州産業連盟)は3月16日外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます付で、欧州で猛威を振るう新型コロナウイルスの経済への影響に関する声明を公表、欧州経済への打撃につながる要因として、(1)一部のEU加盟国が導入している国境管理措置の強化(出入国制限)に伴う観光・外食産業などへの悪影響、(2)中国製造業の混乱に伴うEU製造業の供給力の低下を挙げ、欧州産業界への短期的な悪影響は不可避との見方を示した。また、こうした悪影響に既に直面している中小企業に対する支援策をEUに提言した。

VAT税率低減など含むEUにおける中小企業救済・支援策を示す

ビジネスヨーロッパは、現在の新型コロナウイルスの感染拡大に伴う困難な状況を、出来るだけ多くの企業が生き残るための施策として、中小企業をはじめとする企業に対し喫緊に求められる支援策として、次を挙げた。

  • 事態の推移に併せた欧州中央銀行(ECB)と欧州投資銀行(EIB)などの協調による適切な金融措置の継続。特に金融システムに対する適切な流動性の確保、企業向けの適切な融資の実施。貸出条件付き資金供給オペレーション(TLTRO)の期間と対象の延長・拡大。
  • 金融市場を安定化するための金融規制・監督当局による対策の準備。具体的には、本来は健全な借り手だった企業が新型コロナウイルスの悪影響に伴い流動性問題に直面した場合、一時的返済猶予に応じるなど実体経済へのアクセスを確保するための社債・銀行債の導入など。
  • 財政政策による異常な一時的内需低迷に対する対策。このためにEUの安定成長協定に織り込まれている最大限の柔軟性を一時的に許容すべき。例えば、個人消費支援や新型コロナウイルス対策に関わる医療関連支出拡大、企業に対する直接支援などの広範な施策を盛り込むこと。EU加盟国がこうした財政出動を円滑に進められるようにするため、欧州委は安定成長協定で定められている裁量を出来るだけ早期に適用する意向を明確にすべき。
  • 新型コロナウイルス問題に伴う数多くの企業、特に中小企業が直面する流動性と債務返済の問題やウイルス感染拡大を防ぐために責任ある対応として一時的な事業所閉鎖などの対応に踏み切った場合などの深刻な経営問題について具体的な救済策を示すべき。

また、ビジネスヨーロッパは、EU加盟国レベルでも、様々な施策の検討が必要としており、具体的には、次のポイントを提言した。

  • 企業に対するクレジット・ライン(融資限度額)についての国家保証の供与
  • 企業の納税・社会保障納付の猶予、付加価値税(VAT)率低減の検討
  • 新型コロナウイルスの影響、政府による制限、あるいは需要減退などに伴い(事業所の)閉鎖に追い込まれた結果として、時間短縮労働を行う企業に財政支援を提供
  • 企業や労働者を支援するための失業保険制度に関する柔軟性確保
  • 企業の契約上の「不可抗力条項」(適用)に関する明確化。新型コロナウイルスについて EUは他の関連要素(渡航禁止、就業停止、店舗の強制閉鎖など)と共に、契約関係に影響を及ぼす不可抗力と看做すことを加盟国に対して奨励すべき。
  • (公共事業などについて)支払い遅延や政府との契約不履行などを理由とする企業への課徴金の賦課停止

(前田篤穂)

(EU)

ビジネス短信 d7f6d9aa327e3ebe