南ア財務省、新型コロナ経済対策として新たな税恩典策を発表

(南アフリカ共和国)

ヨハネスブルク発

2020年04月27日

南アフリカ共和国のティト・ムボウェニ財務相は4月23日、新型コロナウイルスの経済対策の一環として総額700億ランド(約3,990億円、1ランド=約5.7円)の税恩典策外部サイトへ、新しいウィンドウで開きますを発表した。これは4月21日にシリル・ラマポーザ大統領が国民演説(2020年4月23日記事参照)で説明した、総額3兆円規模の経済社会支援パッケージに含まれるものだ。

すでに財務省は3月29日に第一段階の支援として、雇用者向けの租税特別措置や、売上高5,000万ランド以下の中小企業を対象にした法人税の一部の支払い繰り延べなどを発表していたが(南ア財務省ウェブサイトPDFファイル(外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます))、その後の経済状況の悪化を受け、大企業を含め企業の資金繰りに対する支援の要請が数多く寄せられたことから、さらに支援を拡充する措置となった。今回発表された支援策の主な内容は以下のとおり。

  • 技能開発税免除期間(タックス・ホリデイ):5月1日から4カ月間、雇用者向けの技能開発税(総給与額の1%)を免除(60億ランド)
  • 付加価値税(VAT)還付ファストトラック化:少額納税者を対象に、通常2カ月に一度の還付申請を毎月可能とする(5月からの開始に向け準備中)
  • 炭素税の申請および1回目の支払いの3カ月繰り延べ(20億ランド)
  • アルコール飲料・たばこに係る物品税の3カ月支払い繰り延べ(60億ランド)
  • 2020/2021年度予算案で発表した増税案の一部実施延期(2020年3月5日記事参照
  • 雇用税特別措置の拡大:月収6,500ランド以下の被雇用者にかかる雇用税への補助を月額500ランドから750ランドに拡大(150億ランド)

また、これらの法人向けの支援のほかにも、新型コロナウイルスの対策として新設された「連帯基金(Solidarity Fund)」への個人の寄付を促すため、寄付をした個人に対する個人所得税の課税控除額引き上げ(2020/2021年度)なども発表された。

電力公社エスコムや南ア航空など不採算経営が続く国営企業が足かせとなり財政赤字が拡大する南アは、3月にも米国格付け大手ムーディーズにより長期債務を「投資不適格級」に格下げされるなど(2020年4月3日記事参照)、今後も厳しい財政状況が続くと見込まれるが、経済対策を最優先にする政府の強い意思がうかがえる。

(高橋史)

(南アフリカ共和国)

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