ムーディーズ、南アの長期債務格下げ、2020年の成長率マイナス2.7%との見方も

(南アフリカ共和国)

ヨハネスブルク発

2020年04月03日

米国の格付け大手ムーディーズは3月27日、南アフリカ共和国の長期債務格付け(外貨建て、現地通貨建て双方)を「投資不適格級」となる「Ba1」に格下げし、見通しは「ネガティブ」のままとした。格付け大手の中で唯一「投資適格級」を維持してきたムーディーズは2019年11月に長期債務格付けを投資適格最低の「Baa3」の「ステイブル」から「ネガティブ」への格下げに踏み切ったばかりで(2019年11日11日記事参照)、南ア政府や市場には衝撃が走った。

ムーディーズは今回の格下げの理由として、経済の構造的な成長停滞と不可避な財政赤字の拡大、不安定な電力供給やビジネス・投資の景況感の低迷、政府の構造改革の遅れなどを挙げた。南ア政府は2月に発表した2020/2021年度予算案で、2020年の経済成長率を0.9%に下方修正し、これに伴う歳入の減少による財政赤字のさらなる拡大を明らかにしていた(2020年3月5日記事参照)。

南ア財務省はムーディーズの発表直後に声明を発表し、「最悪の時に起きてしまった」とした。現地報道によると、南ア国内では新型コロナウイルス感染者が3月30日時点で1,300人を超え、3月26日深夜から21日間の外出禁止(ナショナル・ロックダウン)が実施されており(2020年3月26日記事参照)、経済に甚大な影響をもたらすと予想されている。

ムーディーズの発表後、30日に通貨ランドは歴史的な安値となる1ドル=18.09ランドに急落(前日比2.5%減)した。しかし、同日に中国人民銀行が7日物リバースレポ金利引き下げを発表し、31日には1ドル=17ランド後半に反発している。

当地大手投資銀行インベステックのアナベル・ビショップ・チーフエコノミストは、新型コロナウイルスの感染拡大による世界経済全体の不透明性の高まりにより南アの財政赤字が拡大し、ムーディーズによる年内のさらなる格下げもありうると指摘した。同氏はまた、南アの2020年の経済成長率はマイナス2.7%に低下すると予測している。他方で、南ア経済団体連合会(BUSA)は、今回のムーディーズによる格下げへの対処も重要だが、それ以上に今は新型コロナウイルス感染拡大による国内経済への負の影響の緩和に集中するべきだとしている。

(高橋史)

(南アフリカ共和国)

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