大統領、新型コロナ対策で総額3兆円規模の経済支援策を発表

(南アフリカ共和国)

ヨハネスブルク発

2020年04月23日

南アフリカ共和国のシリル・ラマポーザ大統領は4月21日の国民演説で、新型コロナウイルス拡大への対応に向けたさらなる経済社会支援策を発表した。3月26日深夜からナショナル・ロックダウン(外出禁止、2020年3月27日記事参照)が実施されている南アでは、ロックダウン期間中も新規の感染確認が相次いでおり(4月21日時点で感染者数累計3,465人、死亡者数58人)、9日にもラマポーザ大統領は4月30日までのロックダウンの延長(4月16日から2週間延長)と今後の戦略を発表していた(2020年4月14日記事参照)。

ラマポーザ大統領は、ロックダウンが経済に壊滅的な影響を及ぼしているが、今は感染拡大抑制を図るため保健衛生介入の強化が最優先事項であることを強調。そのような状況でも、政府は経済対策の第1フェーズとして3月中旬から減税や失業保険基金(UIF)を通じた雇用者支援などの対策をすでに実施していると説明した。その上で、需要や供給の急減少への対処や雇用確保のため、第2フェーズとしてGDPの約10%に相当する総額5,000億ランド(約2兆8,500億円、1ランド=約5.7円)規模の経済社会支援パッケージを実施するとした。主な内容は以下のとおり。

  • 医療サービス、医療機器、コミュニティへの訪問検査などへの追加支出(200億ランド)
  • 自治体による緊急の水供給や施設・公共交通機関の消毒に係る追加支出(200億ランド)
  • もっとも脆弱(ぜいじゃく)な世帯を6カ月間経済的に支援する「コロナウイルス補助金」(500億ランド)
  • 失業者に対し6カ月間、月額350ランドを支給する「特別コロナウイルス支援補助金」
  • 雇用保護・雇用創出向けの予算確保(1,000億ランド)
  • 中小企業、スパザショップ(パパママショップ)向け追加支援(20億ランド)
  • 市中銀行、財務省、準備銀行の協調による企業支援向け借入保証スキーム(2,000億ランド)(注)

また、これらの実施策のほかにも総額約700億ランド相当の税恩典策を実行するとし、詳細については近く財務相が発表するとした。ラマポーザ大統領はこれらの実施に必要となる予算については、国家予算の組み替えのほか、国内外の金融機関から調達するとし、IMFやBRICS新開発銀行、アフリカ開発銀行とも協議を続けていると述べた。さらに大統領は経済対策の第3フェーズとなる「経済戦略」についても準備を進めており、4月23日にロックダウン後の経済活動再開に関し再度演説を行うとした。

低所得者向けの直接給付を含めた今回の支援策の発表を受け、国内最大級の経済団体であるビジネス・リーダーシップ・サウス・アフリカ(BLSA)のブスィスィウェ・マブーソ最高経営責任者(CEO)は、「大統領は(低所得者の)可処分所得なしには、経済を始動させることができないことを知っている」と政策を評価している(「Fin24」4月21日)。

(注)初期段階では年間売上高3億ランド以下の企業が対象

(高橋史)

(南アフリカ共和国)

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