公的債務拡大を受け公務員給与削減へ、2020/2021年度予算案を発表

(南アフリカ共和国)

ヨハネスブルク発

2020年03月05日

南アフリカ共和国のティト・ムボウェニ財務相は2月26日、2020/2021年度(2020年4月~2021年3月)予算案を発表した。経済成長の鈍化に伴う財政状況の悪化に一向に歯止めがかからないことが明らかになった。政府は当面、公務員の給与削減など歳出減に努めるとともに、増税策を講じるとしている。

2019年の実質GDP成長率見込みは、2018年10月の中期予算方針(2019年11月11日記事参照)で発表した0.5%から0.2ポイント下方修正し、0.3%とした。その理由として、計画停電が続く電力不足(2020年2月21日記事参照)を挙げた。2020年の成長率見通しについても、主要貿易相手国の成長鈍化を背景に0.9%と、前回発表した1.2%から0.3ポイント下方修正した。

経済成長率の見直しに伴い、2019/2020年度予算案の想定から約633億ランド(約4,431億円、1ランド=約7円)の税収減となり、2019/2020年度の財政赤字はGDP比6.3%に悪化すると発表(前年度予算案時点では同4.5%と予測)した。2020/2021年度についても、歳出(1兆9,544億ランド)が歳入(1兆5,839億ランド)を上回り、財政赤字はGDP比6.8%まで拡大するとした。公的債務(グロス)も2019/2020年度は前年度のGDP比56.7%から61.6%に拡大を予測。さらに、2022/2023年度には71.6%まで上昇するとした(前年度予算案では59.7%と予測)。

財政健全化に向け、ムボウェニ財務相は歳出抑制のために向こう3年間で公務員の給与を総額1,602億ランド削減すると発表した。歳入に関しては、燃料税やたばこ税(加熱式たばこを含む)、酒税の増税策を発表した。

今回の予算案発表直後、最大の労働組合の南ア労働組合会議(COSATU)は公務員給与削減案に断固反対すると表明した(「IOL」2月26日)。他方、今回の財政赤字拡大の発表を受け、大手格付け会社のうち唯一、南アの長期債務格付けを「投資不適格級」としていない米国ムーディーズは即座の格下げはしないのではないかとする見方が当地では強い。

(高橋史)

(南アフリカ共和国)

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