1月インフレ率が8カ月ぶり高水準、政府は利下げに動くか

(フィリピン)

マニラ発

2020年02月12日

フィリピン統計庁(PSA)は2月5日、2020年1月の消費者物価指数(CPI)上昇率(インフレ率)が2.9%となり、3.2%を記録した2019年5月以来、最も高くなったと発表した。

2018年1月1日に施行された、税制改革法第1弾による物品税の増税(2018年3月27日記事参照)や、世界的な商品市況の高騰基調も重なり、2018年通年のインフレ率は5.2%の高水準になったが、その反動で2019年は通年で2.5%と物価は安定していた。フィリピン開発予算調整委員会(DBCC)は2019年12月、2020年から2022年までの3年間のインフレ率の目標を2~4%に据え置くと発表している(2020年1月10日記事参照)。

2020年に入りインフレ率が増加した要因として、CPIバスケットの32%を占める食品・非アルコール飲料のインフレ率が2.2%と、前月の1.7%から0.5ポイント増加したことが挙げられる。そのほか、アルコール・たばこ(19.2%、前月比0.8ポイント増)、運輸(3.0%、0.8ポイント増)、住宅・水道光熱費(2.5%、0.6ポイント増)といった品目が大きく上昇した点も挙げられる。一方で、2020年に入り下降した項目は、レストランおよび雑品(2.6%、0.1ポイント減)のみだった。

ドゥテルテ政権は経済成長率の目標を6~8%に設定し、2017年に6.7%、2018年に6.2%の成長率を達成したものの、2019年は5.9%と初めて目標を下回った。そうした状況を受け、フィリピン中央銀行(BSP)は2019年に入り、3回にわたって政策金利を引き下げ、市中銀行から強制的に預金の一定割合を預かる預金準備率も3回引き下げるなど、景気底上げのための金融政策を継続して打ち出している。BSPのベンジャミン・ディオクノ総裁は2020年1月、前年や前々年と同様に、2020年も政策金利の引き下げを行う見込みを発表した。

1月に入り、マニラ近郊の火山の噴火活動活発化(2020年1月14日記事参照)に加えて、中国・武漢市を感染源とする新型コロナウイルスの感染拡大によるフィリピン経済への影響も鑑み、フィリピン政府がさらなる景気刺激策を打つのか注目される。

表 フィリピンのインフレ率推移

(坂田和仁)

(フィリピン)

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