2020年の国会審議重要法案を展望する

(ブラジル)

サンパウロ発

2019年12月27日

2019年1月に誕生し、財政再建を主要政策の1つに掲げてきたジャイール・ボルソナーロ政権は、2019年10月、約8,000億レアル(約21兆6,000億円、1レアル=約27円)の歳出削減効果を見込む社会保障制度改革法案を成立させた(2019年10月24日記事参照)。今後の重要な国会審議案件は何があるのか。12月下旬に行われた上下両院議長の発表を基に、2020年に予定する重要法案を紹介する。

ロドリゴ・マイア下院議長(リオデジャネイロ州選出、与党・右派民主党)による発表は、以下のとおり。

税制・行政改革法案(2019年5月21日記事参照)に加えて、連邦最高裁判所(STF)による決定で、二審でも収賄の罪で有罪判決を受けたルイス・イナシオ・ルーラ・ダ・シルバ元大統領が釈放されたことを契機に、緊急審議が始まった憲法改正法案の審議(2019年11月12日記事参照)を優先する方針。このほか、低所得者向け現金給付プログラム「ボルサ・ファミリア」、中央銀行独立性強化法案、官民パートナーシップ(PPP)コンセッション新枠組み法案、環境ライセンス法案などの審査も重要との認識を示した。なお、パウロ・ゲデス経済相が示唆したデジタル金融取引税の創設については、審議に反対している。

(1)税制改革法案

税制の簡素化および効率化。上下両院特別委員会で本改革に関する2つの法案が審議中なことから、2020年2月までにこれらを一本化し、上半期中に一本化された法案を承認する。

(2)行政改革法案

実力主義を保証して、行政サービスの質を強化する法案。採用試験に合格した連邦公務員の職を安定化させるのではなく、公務員が社会に提供する公共サービス自体の安定化を図る。同法案は上半期中の承認を目指す。行政サービスに従事する職員の労働日数を短縮する、緊急憲法改正法案も優先して審議する。

(3)憲法改正法案

二審で有罪判決確定後に刑の仮執行を可能にする憲法改正法案の、4月までの承認を目指す。

ダビ・アルコルンブリ上院議長(アマパ州選出、与党・右派民主党)による発表内容は、以下のとおり。

(1)社会保障制度改革並行官報改正法案(PEC133/2019)

連邦公務員の社会保障制度と同じ規定を、各州政府、市、ブラジリア連邦区に導入するために憲法条文を修正するもの。現在、上院で承認された法案の下院審議を求めている。

(2)税制改革法案

税制改革法案は上半期中の下院通過に期待。審議が長引く場合は2020年10月に行われる全国市長選の後であっても、2020年中に採決することが重要と強調。新たな税金創設については、ブラジルは新たな税負担に絶えられないとして、マイア下院議長と同様に上院でも審議しない方針。

(3)二審で有罪判決確定後に刑の仮執行を可能にする憲法改正法案

2020年4月までに下院で承認されれば、30日以内に上院での審議投票を目指す。

(大久保敦)

(ブラジル)

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