税制改革に向けた法案審議進む

(ブラジル)

サンパウロ発

2019年05月21日

ブラジル現政権の優先課題として、社会保障制度改革法案の審議に注目が集まる一方、税制改革法案の議会審議も同時並行で行われている。税制改革法案は、4月3日にブラジル民主運動党(MDB)のバレイア・ロッシ下院議員(サンパウロ州選出)が議会に提出、2019年憲法改正法案45号(PEC45/2019)として下院で審議中だ。

その内容は、連邦税の工業製品税(IPI)、州税の商品流通サービス税(ICMS)、市税のサービス税(ISS)、2種類の連邦社会保障負担金(PIS/Cofins)を廃し、その代替に物品サービス取引税(IBS)を新たに設け、付加価値税として課すもの。税率は3種類の範囲で連邦、州、市が設定できる。州・市間取引は、出荷地ではなく、仕向け地の税率が適用され、移行期間の設定も想定されている。PEC45号は、民間シンクタンク、税務市民センター(CCiF)のディレクターで2000年代の労働者党政権時代に財務省で要職を務めたエコノミスト、ベルナルド・アピ氏が作成に関与した。

税制改革については、前政権時代にも別の法案が下院で審議されていた。ルイス・カルロス・ハウリー下院議員(当時)を中心に進められていた2004年憲法改革法案293号で、同法案も連邦、州、市の各種税をIBSにまとめる内容で、PEC45号と類似点もある。ブラジルの税制度は、高い税率もさることながら、連邦、州、市それぞれが課税し、税金の種類も多く複雑な点が問題として認識されている。現在審議されている2つの法案はいずれも税体系の簡素化を意図したものだが、連邦、州、市それぞれの税収に影響が及ぶため、審議の難航が予想される。

(二宮康史)

(ブラジル)

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