社会保障制度改革法案を可決、約8,000億レアルの歳出削減効果見込む

(ブラジル)

サンパウロ発

2019年10月24日

ブラジル議会上院は10月23日、社会保障制度改革法案を可決した。賛成60票、反対19票だった。社会保障制度改革は、ジャイール・ボルソナーロ大統領が2019年1月の政権発足時から財政再建の主要政策として掲げてきた。法令化するには、下院・上院ともに憲法司法委員会(CCJ)と特別委員会で審議したのち、それぞれの本会議で2回可決される必要がある。本会議での可決には議席の5分の3以上が賛成しなければならず、上院では49票が必要だった。

今回、上院で2度可決されたことにより、法案は両院を通過した。大統領が署名して成立する。

歳出削減効果は10年間で8,000億レアル(約21兆6,000億円、1レアル=約27円)を見込んでいる。OECDによると、ブラジルの公的支出における社会保障費の割合は2016年時点で35.4%。2012年以降増え続けており、財政赤字の要因の1つになっていた。この法案の成立は投資家の信頼を得る上でも不可欠だ。

争点となっていた年金の受給開始最低年齢は原則として、男性65歳、女性62歳に設定し、所定の年数を満たせば受給できる。

産業界を代表するロブソン・ブラガ・デ・アンドラーデ全国工業連盟(CNI)会長は「政府のイニチアシブだけでなく、上下両院で十分な議論がなされたことが重要だ」とした上で、「財政再建を通じて国民の福祉と経済成長に寄与するものだ」と評価した。また、「今後公務員の年金に関する取り扱いを定めることで、州政府や自治体の財政状況を改善することも投資家の信頼回復につながる」と述べた。

社会保障制度改革の進展は財政再建効果はもとより、税制改革や治安改善、公社の民営化など、政府が重視する新たな政策を議論するための弾みになる。

(古木勇生)

(ブラジル)

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