ミンダナオ島の戒厳令、2019年末で2年半ぶりに解除へ

(フィリピン)

マニラ発

2019年12月13日

フィリピン大統領府は12月10日、2017年5月に布告したフィリピン南部ミンダナオ島の戒厳令を2019年末で解除すると発表した。

ミンダナオ島マラウィ市で2017年5月23日に発生したイスラム系反政府勢力との戦闘を受け、フィリピン政府は当初は60日間の期限でミンダナオ島に戒厳令(注)を布告。戦闘終了後も延長されて期限は2019年末とされ、フィリピン各紙は2020年末までの延長の可能性も報じていた(2019年10月24日記事参照)が、政府は今回、正式に解除を決定した。

フィリピンでは、イスラム教徒による自治政府樹立を認める「バンサモロ基本法」が2018年に成立、2019年2月にはミンダナオ島西部に暫定統治機構が発足(2019年3月5日記事参照)し、暫定的ながら自治政府が成立した。

サルバドール・パネロ大統領報道官は今回の決定について、テロリストや過激派は指導者の拘束などによって既に弱体化しており、戒厳令を延長する必要はないという国防および国家安全アドバイザーの助言によるものと説明した。

ミンダナオ島の中心都市ダバオ市でドゥテルテ大統領はかつて20年間市長を務めた。現市長は大統領の娘のサラ・ドゥテルテ氏だ。市長は、戒厳令解除は喜ばしいことであり、海外の旅行客や海外企業の投資の呼び込みにつながるとの声明を発表した。

日本の外務省は11月1日、フィリピンの危険情報を更新し、これまで危険レベル2(不要不急の渡航は止めてください)だったミンダナオ島の9都市(ブトゥアン市,ハッサン市、ビジャヌエバ市、タゴロアン市、タグム市、サマル市、ディゴス市、マティ市、シアルガオ島)について、危険レベル1(十分注意してください)に引き下げた(外務省ホームページ参照外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます)。これにより、ミンダナオ島で以前から危険レベル1とされていたダバオ市、ジェネラル・サントス市、カガヤン・デ・オロ市の3都市と、上記9都市を合わせた計12都市が危険レベル1となった(2019年11月8日記事参照)。

犯罪率に関する世界的なデータベース「Numbeo Safety Index 2019」によると、東南アジアで最も安全な都市トップ10位に、フィリピンの4都市(ダバオ、マカティ、イロイロ、セブ)が入り、ダバオ市はフィリピンで最も安全な都市とされた(2019年9月20日記事参照)。ダバオ市はドゥテルテ大統領が市長時代に犯罪発生率を大きく削減して治安を改善した。

(注)当局による令状なしでの身柄拘束を可能とし、国民の夜間外出禁止も定める。

(坂田和仁)

(フィリピン)

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