ミンダナオ島の戒厳令、2020年まで延長か
(フィリピン)
マニラ発
2019年10月24日
2017年5月に布告された、フィリピン南部ミンダナオ島の戒厳令が2020年まで延長される見込みだ、と複数の地元メディアが報じている。イスラム系反政府勢力との闘争を受け、当初は60日間の期限で布告されたミンダナオ島の戒厳令(注)は、闘争が終了した後も延長され、現在の期限は2019年末とされている。
フィリピン大学のヘネリト・セビーラ准教授は地元メディアに対して、ミンダナオ島の現在の治安回復を評価し、2019年末で戒厳令を終了させることが最善ではあるとした上で、「ミンダナオ島の民族多様性、政治的な分裂、武装勢力の存在はフィリピンの他の島と比較すると特殊なものであることを考慮する必要がある」と説明した。
ドゥテルテ大統領は2019年7月、ミンダナオ島の地方政府が望むのであれば、戒厳令の2020年末までの延長を検討すると発言したと地元メディアが報じた。また、エスペロン国家安全保障会議議長も戒厳令の1年間の延長を提案しているとした。
日本の外務省は、ミンダナオ島の西部を中心に渡航中止勧告(レベル3)を出しており、どのような目的であれ渡航をやめるよう勧告している(外務省ウェブサイト)。ミンダナオ島の中でレベル1(十分注意してください)とされているのはダバオ市、カガヤン・デ・オロ市、ジェネラル・サントス市の一部地域のみで、ミンダナオ島のほとんどの地域がレベル3または2の状態だ。
フィリピンでは、イスラム教徒による自治政府樹立を認める「バンサモロ基本法」が2018年に成立、2019年2月にはミンダナオ島の西部に暫定統治機構が発足(2019年3月5日記事参照)し、暫定ながら自治政府が成立した。また、イスラム金融の法的枠組みを規定する法案が2019年9月に施行され、ミンダナオ島に多く居住するムスリムの国民による金融市場や銀行サービスへのアクセス、ビジネスの拡大、海外からの投資拡大が期待されている(2019年9月18日記事参照)。
(注)当局による令状なしでの身柄拘束を可能とし、国民の夜間外出禁止を定める。
(坂田和仁)
(フィリピン)
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