高度人材ランキングで63カ国中49位、教育への投資が不十分

(フィリピン)

マニラ発

2019年11月29日

スイスのビジネススクール「IMD World Competitiveness Centre」は11月、世界人材ランキング2019外部サイトへ、新しいウィンドウで開きますを発表し、フィリピンは世界63カ国・地域中49位で、2018年の55位から6ランク上昇した。アジア大洋州諸国・地域14カ国中では12位となった。

この世界競争力ランキングは、世界63カ国を対象に、高度化する世界の産業に対応できる高度人材の各国の供給力をランキング化したもので、(1)海外や国内の高度人材にとってどれだけ魅力的な国であるか、(2)高度人材を労働市場においてどれだけ供給可能か、(3)高度人材の開拓にどれだけの資源を投資しているか、の3点で評価される。

フィリピンは、(1)海外や国内の高度人材にとってどれだけ魅力的な国であるか、については2018年の38位から31位に7ランク上昇、(2)高度人材を労働市場においてどれだけ供給可能か、についても前年の37位から26位と11ランク上昇した。一方で、(3)高度人材の開拓にどれだけの資源を投資しているか、については前年の62位から61位となったものの、比較対象の63カ国・地域の中で最も低い国の1つとされた。

IMD World Competitiveness Centreのアーツロ・ブリス氏はフィリピンの高度人材の開拓への投資が低い点について、GDPに占める各国の教育への投資の割合は、比較対象となった63カ国・地域の平均が4.1%なのに対して、フィリピンは3.5%と低いことを挙げた。学生1人当たりに対する投資額は、フィリピンは376ドルだとした。

フィリピンはその高い英語力や若年層の高い失業率、そして国内の低い賃金実態を背景に、人口の約1割に当たる1,000万人が海外に居住し、年間で約3兆円をフィリピン国内に送金する出稼ぎ大国である一方、人材の国外流出による産業の空洞化、特に優秀な高度人材が高い報酬を提供する国に流出することが問題となっている。

フィリピン経営者協会(MAP)と大手会計事務所PwCフィリピンが9月に発表した国内の127社の最高経営責任者(CEO)に対するアンケート調査結果によると、80%のCEOがスキルを持った人材の不足が自社の成長の阻害要因になっていると回答した(2019年9月18日記事参照)。

フィリピン政府は、中小企業が第4次産業革命に対応できるように、新しいテクノロジーの導入方法を学ぶパイロット工場となる次世代工場やアカデミーを貿易産業省が創設することを発表(2019年11月19日記事参照)、シンガポールのスキルズフューチャーシンガポール(SSG)と覚書(MOU)を締結し、SSGと連携して競争力のある人材を育成する人材育成プログラムを実施すると発表(2019年11月12日記事参照)するなど、今後到来するとされる第4次産業化への人材面での対応を進めている。

63カ国・地域のトップ10カ国・地域は、上位から順にスイス、デンマーク、スウェーデン、オーストリア、ルクセンブルグ、ノルウェー、アイスランド、フィンランド、オランダ、シンガポールとなり、日本は35位にとどまった。アジア大洋州諸国・地域ではシンガポール、香港、オーストラリア、ニュージーランド、台湾、マレーシア、韓国、日本、インドネシア、中国、タイ、フィリピン、インド、モンゴルの順だった。

(坂田和仁)

(フィリピン)

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