与野党が政権移行に向け協力姿勢

(アルゼンチン)

ブエノスアイレス発

2019年11月06日

アルゼンチンのマウリシオ・マクリ大統領は大統領選挙翌日の10月28日、当選した野党のアルベルト・フェルナンデス次期大統領と会談し、政権移行に協力することで合意した。各種報道によると、大統領府での約1時間に及んだ会談では、外貨準備高の維持と社会平和を保つことが先決だとして、政権移行に向けて協業できるチームを結成することで一致した。両氏は会談の様子の写真とともに、全国民のために民主的で整った政権移行に努めるとのメッセージをツイッターに投稿した。

政権移行チームには、現政権側からマルコス・ペーニャ首相、ロヘリオ・フリヘリオ内務・公共事業・住宅相、エルナン・ラクンサ経済相が任命された。12月10日に就任する次期大統領側からは、次期首相とされるサンティアゴ・カフィエロ氏、ペロン党穏健派と急進派のつなぎ役を務めているとされるエドゥアルド・デペドロ議員、内務相(1992~1993年)や司法人権相(2003~2004年)を務めたグスターボ・べリス氏、次期大統領府法制長官とされるビルマ・イバーラ氏が参加する。

8月11日の予備選挙(PASO)でのマクリ大統領の予期せぬ大敗で通貨ペソが急落し(2019年8月13日記事参照)、政府が9月1日から資本取引規制を導入する(2019年9月3日記事参照)など、先行き不安な状況が続いた。大統領選挙の結果によって、新たなペソ下落や規制強化を恐れ、国民は選挙日直前まで銀行口座からの外貨引き出しや外貨購入を加速させた。外貨準備高は、PASO直後の657億3,600万ドルから、本選挙直前の10月25日には435億5,100万ドルまで減少した。外貨準備高の維持のために本選挙翌日から資本規制の強化が発表された(2019年10月29日記事参照)。

外貨購入の規制強化によって、為替の公定レートと闇レート(ブルーレート)の乖離がさらに広がるとも予想されていたが、両レートの乖離幅は、選挙直前25日の16.5%から、28日には5.5%へと縮小した。また、両レートとも選挙直前の25日よりもペソ高の方向に動いている。

最悪の事態を予想して外貨購入を急いだ市民が今度は、実生活での必要性に駆られてペソ買いに回っているのが原因の1つだとみられる。また、選挙活動中や選挙討論会で見られたマクリ大統領とフェルナンデス次期大統領との対立的な姿勢が一変し、融和的な姿勢を示していることも、産業界や金融市場に安堵(あんど)感をもたらしているようだ。

(山木シルビア)

(アルゼンチン)

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